ストレス下の大麻で暴走していたのは、脳のどこだったのか?

研究チームが使ったのは、キツネの尿に由来する匂いです。
天敵であるキツネの匂いは、マウスにとって生まれつき危険を知らせる合図になります。
マウスは匂いを嗅ぐ前に、何の作用もない偽薬か、量を変えた合成カンナビノイドを投与されました。
合成カンナビノイドとは、大麻に含まれる成分の仲間であるカンナビノイドを、人工的に作ったものです。
さらに研究チームは、マウスの頭に小さな蛍光顕微鏡(ミニスコープ)を取り付けました。そして、自由に動き回るマウスの神経細胞一つひとつについて、カルシウムの変化をリアルタイムで記録したのです。
行動の違いは、すぐに表れました。
カンナビノイドを投与されたマウスは、偽薬のマウスに比べて、体を固めて動かなくなる「すくみ」がはっきり増え、匂いを過剰に避けるようになったのです。
匂いを調べに近づく時間も、ずっと短くなっていました。
しかも、危険に対するこうした身構えは、投与したカンナビノイドの量が多いほど強まっていました。
では、このとき脳の中では何が起きていたのでしょうか。
研究チームが注目したのは、恐怖の処理に関わる「扁桃体」の中でも、中心部にある「扁桃体中心核」です。
その中の「ソマトスタチン神経細胞」(ソマトスタチンという物質を作る神経細胞)と呼ばれるごく小さな細胞の集まりが、カンナビノイドの量に応じて活発になっていたのです。
カンナビノイドを投与されたマウスの脳では、危険に関わる場所や行動を表す神経活動のまとまりも、よりはっきりと現れていました。
次に研究チームは、この細胞が本当に不安の行動を生み出しているのかを確かめることにしました。そこで化学遺伝学的な手法(特定の細胞に人工の受容体を組み込み、薬で働きを切り替える方法)などを使って、扁桃体中心核のソマトスタチン神経細胞だけを働かないようにしました。
すると、カンナビノイドによって強まっていた匂いの回避が、起こらなくなりました。
一方で、すくみについては、この細胞が必要という結果にはなりませんでした。
つまりソマトスタチン神経細胞は、大麻の成分が危険を避ける行動を強めるときの「入り口」として働いていたのです。






















