隠れた神経を「新しい先端」に作り直す

オランダでは毎年およそ450人の女性が外陰がんと診断され、その約4分の1で、がんがクリトリスやその周りに及んでいます。
外陰がんの手術では、切り取った跡を近くから移した皮膚などで覆う再建はふつうに行われていますが、クリトリスの再建はまだまれでした。
そこでテン・アイケルダー氏は、形成外科医のティム・ネイハウス氏と一緒に新しい手術の方法を作りました。
土台にしたのは、女性器切除(FGM/C)を受けた人の再建のために生まれた「フォルデス法」という方法です。
手術では腫瘍を取り除くとともに、がんを取り残していないか、切り取る範囲の縁を慎重に確かめます。
次に、クリトリスを支えている靭帯(じんたい)をゆるめて、皮膚の下にある部分を動かせるようにします。
そして神経の束を周りからはがして位置を整え、新しいクリトリスの先端を作ります。
その表面は、頬の内側から少しだけ取った粘膜を移して覆います。
頬の内側の粘膜は、外陰の周りの組織とよく似ているのだそうです。
さらに、クリトリスを覆う「フード」の部分も新たに作ります。
こうして神経と血管がつながったままの状態を保ち、クリトリスの形と働きを取り戻すことを狙っています。
作り直したクリトリスで「感覚」は戻ったのか?

研究チームは論文の中で、外陰がんの手術と一緒にクリトリスの再建を受けた患者18人の経過を報告しています。
その結果、18人中16人(88.9%)が、手術の後にクリトリスでオーガズムを得られたと報告されました。
クリトリスの再建そのものに関わる合併症(手術の後に起きる不具合)が出たのは、18人中2人(11.1%)でした。
再建のために増える手術の時間は、およそ15分と見積もられています。
また医療センターの発表によると、これまでに再建を受けた最初の23人では、9割の人が手術の後に再びオーガズムを得られるようになったといいます。
その時期は、多くの場合、手術から3〜6カ月のあいだだったそうです。
テン・アイケルダー氏は「はじめはクリトリスが敏感すぎたり、逆に鈍かったりすることもありますが、1年たつと回復はたいてい最もよい状態になります」と話しています。
さらに「ほとんどの女性で、感覚は手術前と同じくらいまで戻ります」とも述べています。
論文は、この再建は技術的に実行でき、合併症も少なく、がんの治療としての安全性を損なわずに性と心の負担を和らげられる可能性がある、とまとめています。
研究チームは、この方法が外陰がんの患者だけでなく、女性器切除を受けた女性の助けにもなるかもしれないと考えています。
いまオランダでは、研究計画の一部としてこの手術を全国に広げる取り組みが始まっていて、外陰がんを治療する国内のほかの8つの病院も参加しています。
ネイハウス氏とテン・アイケルダー氏は、ほかの国の専門医にもこの手術を教えているところです。
ただし、結果はまだ最初の患者たちのもので、論文も、前もって計画を立てて患者を追いかける研究(前向き研究)でさらに確かめる必要があるとしています。
チームはオランダがん協会の支援を受けて、再建が本当に性の働きや生活の質を高めるのか、日々の診療に安全に取り入れられるのかを、ほかの病院と一緒に確かめていく予定です。
がんの治療で守るものは命だけではなく、その後の暮らしの喜びまで含めて考える医療が、少しずつ形になり始めているのかもしれません。





















