この研究の概要
発表
菌類の学術誌「Frontiers in Fungal Biology」に、2026年9月に掲載されました。
研究チーム
中国科学院昆明植物研究所のインドゥニル・C・セナナヤケ准教授(責任著者)らのチームです。著者の所属には、雲南省の大学のほか、タイのチェンマイ大学やメキシコの研究機関も入っています。
調べた対象
雲南省の温帯の針葉樹林と熱帯雨林で、2024年8〜9月と2025年7月に採集された標本など5点です(うち1点は、培養した菌を乾かした標本です)。
調べ方
形をくわしく観察し、4つの遺伝子領域の配列とゲノムを比べて、ほかの菌との血縁を調べました。胞子の培養や、分子時計による枝分かれの年代の推定も行いました。
分かったこと
研究チームは、子嚢菌でこれまでに記録された中で最大の子実体と位置づけ、新しい種・属・科にあたるとしました。この科は約6500万年前に生まれたと推定され、ゲノムでは炭水化物を扱う酵素の遺伝子が、枯れ木を分解する代表的な仲間であるマメザヤタケ属の半分以下でした。
まだ分かっていないこと
これほど大きく育つ理由は、周りより高く伸びて胞子を風に乗せやすくするためではないかという仮説の段階です。一族が生まれた時期が大量絶滅の直後に重なることも、森の変化と結びつけた一つの可能性にとどまります。
子嚢菌の子実体、背の高さの記録は20〜30cmほどだった菌類の中で最も種の多いグループは、子嚢菌(しのうきん)と呼ばれる仲間で、6万4000種を超えます。
子嚢菌は、シイタケのような本物のキノコを作りません。
代わりに「子実体(しじつたい)」と呼ばれる塊を作り、その表面や内側の小さな袋から胞子を放ちます。
顕微鏡で400倍に拡大した、ある子嚢菌の子実体と、その中の胞子です。D-rexとは別の種の子嚢菌です。 Credit: Eunice Laurent / Wikimedia Commons (CC BY-SA 4.0 )
この子実体は、ふつうはそれほど大きくなりません。
たとえば、こん棒のような子実体を束になって出す菌がいますが、1本の高さは5〜8cmほどです。
これまでの子嚢菌の子実体で、背の高さの記録は20〜30cmほどでした。
重さで目立つ例外は、アフリカのケニアで記録された、竹に生える菌(エングレロミセス・ゲッツェイ)です。
この菌は、竹の茎の地上9〜12mほど、建物の3〜4階ほどの高さに丸い塊を作ります。
大きなものは直径約30cm、重さ約3.2kgに達し、子嚢菌で最もかさのある例の一つとされてきました。
中国 の昆明植物 研究所のチームは、雲南省の森で野外調査を行いました。
調べたのは、ダマイディとイーピンランに近い温帯の針葉樹林と、ナンバンに近い熱帯雨林です。
そこで見つかった子実体は白っぽく大きく、明らかに未知の子嚢菌のものでした。
それらは木の根から生え、根の周りの土から立ち上がっていました。種の基準となった標本は、中国のコルクガシと呼ばれる木の根に伴って見つかりました。
チームは子実体を持ち帰り、証拠となる標本を研究所に保管して、くわしい調査に取りかかりました。