首を圧迫して得る快感――若者に急増する“危険な嗜好”

首を圧迫して意図的に呼吸を制限する「首絞めプレイ(チョーキング)」は、近年SNSやポルノを通じて若年層を中心に急速に広がりつつあります。
もともとBDSMコミュニティでは呼吸をコントロールする「ブレスプレイ」の一種として知られており、長らく「危険だが刺激的な行為」とされてきました。
しかし、近年はもはや一部の嗜好では留まらず、学術的にも見逃せないほど一般化が進んできたのです。
その背景には、「首絞めプレイ」を行うことで得られる可能性のある“快感”に注目が集まっていることが挙げられます。
たとえば、脳への酸素供給が断続的に減少するとアドレナリンなどが放出されるため、性的興奮を高めるのではないかとする説もあります。
また首まわりは迷走神経など多くの神経が集まる敏感な部位であり、軽度の圧迫刺激が人によっては快感や陶酔感を増強する要因になり得るという見解があることも知られています。
一方で、首という生命維持に直結する箇所を圧迫する行為は「心臓の鼓動を手のひらで止めかける」ようなもので、わずか数秒のミスでも重大なダメージを与えかねません。
血液や酸素の供給が絶たれれば脳細胞は急速に損傷を受け、後からじわじわと障害が出る遅発性の症状も報告されています。
さらに呼吸停止や心停止、最悪の場合は死亡に至るリスクも否定できず、BDSMコミュニティでは古くから「最も危険な行為のひとつ」と警鐘が鳴らされてきました。
とはいえ、その危険性と快感が“表裏一体”であるかのように語られるため、「正しいテクニックと信頼関係、そして同意さえあれば大丈夫」という“安全神話”も根強いのが現状です。
こうした「首絞めプレイ」の急速な拡大と、“安全神話”がどのように広まっているのかは学術的にも大きな関心事となっています。
実際、ポルノ映像やSNSでは「適切な力加減なら問題ない」といった情報が拡散されやすく、多くの若者が「やり方次第で安全に楽しめる」と安易に考えてしまうケースが増えています。
ところが、首絞めの実態やリスクに関する科学的知見は十分に共有されているとは言い難く、医学的・心理的影響を正しく理解せずに行う人が少なくありません。
そこで今回研究者たちは、オーストラリアの18~35歳の若者を対象にアンケート調査を行い、彼らが首絞めセックスをどのように“安全”と捉え、そのリスクと快感をどのように評価しているのかを明らかにすることにしました。