約6500万年前に生まれたと推定される一族と、大きさの謎
チームはさらに、この一族がいつ枝分かれしたのかを推定しました。
使ったのは「分子時計」という方法で、DNAに積み重なった違いの量から、分かれてからの時間を見積もります。
進化の年代が分かっている菌類のゲノムと比べ、時計の目盛りを合わせました。
その結果、D-rexの科が生まれたのは約6500万年前と推定されました。
これは、恐竜を絶滅させた白亜紀末の大量絶滅から、わずか100万年ほど後にあたります。
この大量絶滅では、動植物の種の推定75%が姿を消し、地球の生き物の顔ぶれが大きく入れ替わりました。
論文の責任著者で、昆明植物研究所のインドゥニル・C・セナナヤケ准教授は、この時期の重なりに注目しています。
大量絶滅の後、森は大きく変わり、枯れた植物が一気に大量に手に入るようになったといいます。
木に関わる分解者の菌にとって、その混乱が新しい暮らしの場を生んだかもしれない、というのが准教授の見方です。
ただしこれは時期の重なりから考えた一つの可能性で、確かめられた筋書きではありません。
ゲノムからは、炭水化物を扱う酵素の遺伝子がとても少ないという、意外な特徴も見つかりました。
マメザヤタケ属(枯れ木に生える、黒いこん棒のような子嚢菌の仲間)はこうした遺伝子を535〜635個もちますが、D-rexがもつ数はその半分以下でした。

とくに、ペクチンを分解する酵素の一群「ペクチンリアーゼ(PL)」の遺伝子は、ほぼゼロでした。
近い仲間が7〜19個もつのに対し、D-rexは0〜1個で、ある株では1つも見つかりませんでした。
反対に、糖をほかの分子につなぐ酵素の遺伝子は、こうした酵素の遺伝子全体の約26%を占めていました。目立って高い割合です。
D-rexを含む「目(もく)」という、科より大きなグループは、植物の複雑な分子を分解する酵素を作ることで知られます。
研究を伝える発表では、D-rexもそうした酵素で枯れ木を消化しているかもしれない、と述べられています。
ところが遺伝子の数で見ると、その道具箱はかなり小ぶりだったことになります。
この偏りが暮らし方とどう結びつくのかは、今回の発表では示されていません。
では、なぜD-rexはこれほど大きくなるのでしょうか。
セナナヤケ准教授は、周りの草や落ち葉より高く伸びれば、茂った森でも胞子を風に乗せやすいのではないかと考えています。
一方で、これほど大きな体を作るには、多くのエネルギーが要ります。
そのため准教授は、利点が負担を上回る環境でだけ、この戦略が進化したのだろうと推測しています。
どちらも仮説の段階で、大きさの理由が確かめられたわけではありません。
研究チームは、東アジアの森には、まだ調べられていない菌類の多様性が眠っているとしています。
そして、中国の亜熱帯の森から、さらに多くの発見があるだろうと予想しています。
雲南の森では、約6500万年前に生まれたと推定される一族の「王」が、黒い柄を土に下ろし、地上には高さ10〜20cmほどの、胞子を作る部分を伸ばしていたのです。
次に森でキノコを見かけたら、王様が隠れていないか、根元の土までのぞいてみたくなるかも。
ここからは、子嚢菌をもっと知りたい人へ
子嚢菌とは、担子菌と並ぶ菌類の大きな仲間です

子嚢菌は菌類の仲間で、担子菌とともに、菌類の中の一つの大きなまとまりをつくっています。
この仲間には、枯れ木を腐らせて暮らす菌もいます。
木を腐らせる子嚢菌の多くが起こすのは、「軟腐朽(なんふきゅう)」と呼ばれる腐り方です。
胞子の放ち方にも特徴があり、枯れ木に生える子嚢菌の一種では、一つの子実体が何か月も、ときには何年にもわたって胞子を放ち続けることがあります。





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