・体重約3.5キロという世界最小の類人猿Simiolus minutusの存在を示す3本の歯がケニアで発見
・小型類人猿は、食物が同じだったコロブス亜科のサルとの生存競争に負け、ほとんどが中新世時代に絶滅した
・歯が発見された地層の年代分析の結果、Simiolus minutusが約1,250万年前に生存していたと推測
「小さな」ビッグニュースです。
世界最小の新種の類人猿の存在を示す証拠が発見されました。Simiolus minutusと名付けられたこの「ミニ類人猿」は、大人でも体重わずか3.5キロほどと猫よりも小さく、約1,250万年のケニアに生息していたと推測されています。こうした小型類人猿は他にも存在していたことが知られていますが、Simiolus minutusはその中でも最小です。論文は雑誌Journal of Human Evolutionの最新号に掲載予定です。
https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0047248417302270
Simiolus minutusの存在が示されたきっかけは、わずか3本の小さな臼歯の発見。ニューヨーク州立大学ストーニーブルック校で人類学を研究するジェームズ・ロージー教授が、2004年、ケニアのトゥーゲン・ヒルズでのフィールドワーク中にそのうちの1本を発見しました。
ロージー氏がイエール大学の人類学者アンドリュー・ヒル教授(2015年に他界)と共同で、この歯が既知の類人猿のものと一致するかどうかを調べたところ、どれとも一致しませんでした。そこで、過去に同じ地域で行われた古生物学のフィールワーク中に別々に発見された他の2本の歯と比較すると、これらに解剖学上の類似性があることが分かりました。こうして、これら3本の歯が新種の類人猿のものであるという結論に至ったのです。
Simiolus minutusが絶滅した時期は分かっていませんが、コロブス亜科のサル(テングザルやラングールなどの霊長類)との生存競争に破れて姿を消したと考えられています。類人猿には尻尾が無く、サルにはあることからも分かるように、類人猿とサルは別系統に属します。
コロブス亜科のサルは中新世時代に出現しましたが、「新入り」の彼らは、食べ物を巡って小型類人猿と競争する必要がありました。歯の調査から、小型類人猿もサルと同じように、木の葉や果物を食料にしていたことが判明しました。大量の木の葉や果物を必要とした小型類人猿は、コロブス亜科のサルと、やがて彼らとの競争に破れてしまいます。こうして、戦いに勝ったコロブス亜科のサルが華々しい繁栄を示した一方で、Simiolus minutusを含む小型類人猿の多くが中新世時代に絶滅し、生き残った種はごくわずかでした。
トゥーゲン・ヒルズで大規模なフィールドワークが開始されたのは、1960年代の終わり頃。ヒル教授を含む人類学者や地質学者たちは、カリウムとアルゴンの比率をもとに地層の年代を特定する「カリウム・アルゴン法」を用いました。Simiolus minutusが生存した年代も、歯の発見場所の地層から求められたとのこと。
Simiolus minutusの歯は現在、ケニア国立博物館に保管されています。もし仮に、彼らがサルたちとの競争に勝っていたとしたら—。「小さな隣人」と暮らす、今とはまったく異なる世界になっていたかもしれませんね。これら小さな化石は、生き物の進化のロマンを私たちに感じさせてくれます。
via: livescience, dailymail / translated & text by まりえってぃ