■2人の人間が異なる現実を同時に経験することがあることが、量子物理学の思考実験で示された
■光子は、可能性のあるすべての結末から成る「量子重ね合わせ状態」で存在する
■この世界には、客観的事実など存在しないのかもしれない
最近の量子物理学の研究で、これまで理論の範疇を超えることのなかったある驚くべき説を裏付ける証拠が見つかりました。特定の条件下では、2人の人間が、同じ出来事を目にしたとしても、2つの異なる出来事を見ており、そのどちらもが正しいというのです。
研究を行ったのは、スコットランドのヘリオット・ワット大学の物理学者たち。古典的な量子物理学の思考実験を再現することで、2人の人間が異なる現実を同時に経験することがあることを初めて立証しました。論文は、プレプリントサーバの「arXiv」に掲載されています。
https://arxiv.org/abs/1902.05080
量子重ね合わせ状態 違う現実が成り立つ!?
実験は、2人の科学者が1つの光子を観察するというものです。光子とは、光を定量化できる最小単位のこと。光子は、条件によって粒子か波動のどちらかとして活動します。
興味深いのは、粒子または波動として存在する光子が、誰かが実際に計測してどちらであるかを決めるまでは、「重なり合った状態」で存在しているということ。つまり、光子は同時に粒子でもあり波動でもあるということです。
今回の思考実験では、一人目の科学者がじっと光子を分析し、その形式を判断。その後、もう一人の科学者が、最初の計測の結果を知らされることなく、同じ光子の観察を行いました。
その結果、光子が、一人目の科学者の計測結果を含む、すべての可能性のある結末から成る「量子重ね合わせ状態」で存在することが明らかに。2人の科学者は、それぞれ異なる現実を経験していたのです。彼らはお互いの判断に同意しませんでしたが、厳密に言えば彼らの両方が正しいということになります。