そもそも過去と未来を区別しない物理法則たち
そもそも、ほとんどの物理法則は未来と過去を区別しません。例えば、ビリヤードの玉がぶつかり合うのを目撃し、その動画を巻き戻すとします。物理法則はいずれの場合も問題なく機能するので、それら物理法則の範囲内では、どちらの向きが正しいのかを言い当てることは不可能です。
ただし、宇宙は一方向にしか流れないという法則ももっています。それが、熱力学第二法則です。ここでは、物事は秩序から無秩序に向かって動くと定義されています。
例えばビリヤードの正三角形に並べられた玉にブレイクショットが行われるのを見るとします。しかし逆再生の動きを見たら、私たちは違和感を感じるでしょう。
新たな実験は、ビリヤードのテーブルを完全な計算の元で蹴り、転がった玉が完璧な秩序を持った正三角形に戻るようなものです。
実験を2つのキュービットで行った場合、「時間の逆転」が達成できる確率は85%でした。3つのキュービットでは、エラーの発生が増えたため、成功率は50%でした。
エラーの発生率は「装置の利用が洗練されることで改良できる」と研究者は言います。
また、今回の実験は量子コンピュータの開発へ実用的に応用できる可能性があるそうです。プログラムをアップデートすることでノイズやエラーを消すために使える可能性があると、レスコビク博士は述べています。
量子力学の世界は奇妙ですが、失われた秩序さえも巻き戻せることが実験的に示されました。熱力学第二法則に反する挙動はどのように達成されたのでしょうか?これを応用すればタイム風呂敷は実現できるのでしょうか?とてもSF的でワクワクする研究ですね。
https://nazology.kusuguru.co.jp/archives/16061