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量子コンピュータは時間を巻き戻したわけじゃなかったので反省して解説してみる (2/2)

2019.03.30 Saturday

前ページ時間の矢

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量子コンピュータと時間反転

これまでの話を踏まえると、量子コンピュータについて知らなくても誤解を解くことができるはずです。量子コンピュータとは、コンピュータと名付けられているものの、その実態は実験装置です。

すなわち、量子ビットを物理的に操作し、制御することで、通常のコンピュータには困難な情報処理を行うものなのです。量子力学の基本方程式であるシュレーディンガー方程式もまた時間反転解をもつため、量子コンピュータ上の精緻な操作によって時間反転解の実現は可能です。

今回の論文では、粒子2つの散乱の逆過程を量子コンピュータ上のシミュレーションで実現しました。
「2粒子の量子状態の制御」は量子コンピュータ上においても簡単なことではありません。しかし2粒子程度では、時間の矢を巻き戻したと言うにはとても十分ではないみたいです。したがって、この論文をもって「量子コンピュータ上で時間の矢の謎を解いた」というのはナンセンスなのです。

しかし今回の実験は、単なるビリヤード球の衝突とは比較にならないほど非自明なもの。たとえば量子同士が一度接触をすると、不思議な遠隔作用をもたらす「量子もつれ」が発生します。

今回の実験の成果。シミュレータ上で量子もつれを含め2粒子を衝突前の状態に戻すことに成功した / Credit: Nazology staff

今回の実験では、既に発生した2粒子間の「量子もつれ」を巻き戻して「ほどく」ことに成功しており、自然界で勝手に起こる現象ではありません。精緻な制御によってこのような現象を人為的に起こしているわけで、その点で素晴らしい結果といえるのです。

まさか伝言ゲームの果てに大風呂敷が広げられ大変なことになってしまうとは…。この騒動もタイムふろしきで元に戻ったら良いのになぁ。

reference: MIT Technology Review / written by Nazology staff

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