■Paracatenulaの体内に住む細菌Riegeriaは、化学合成で生産した有機化合物をParacatenulaに与える
■Riegeriaは、栄養素を小さな液滴のかたちにすることで、Paracatenulaに食事を提供することが判明
■Paracatenulaは、Riegeriaを傷つけることなく栄養を得て、しかもその栄養をすべて利用するため排泄が不要
温かい海底の砂の中で暮らす扁平動物Paracatenula。5億年以上前の太古から存在する古株の生物です。
口も肛門も腸も持たないParacatenulaは、体内に住む細菌Riegeriaと共生することで栄養を得ています。「それ自体が腸に見えるよ…」というツッコミがどこかから聞こえてきそうですが、その生態にはさらなる驚きが満ちています。
その仕組みは科学者たちを長い間当惑させてきましたが、最近の研究で、RiegeriaがParacatenulaに栄養を運搬する仕組みが明らかになりました。
https://www.pnas.org/content/early/2019/04/03/1818995116
栄養体部に住む細菌の化学合成で栄養たっぷり
Riegeriaは、1,000年以上にわたってゲノムを縮小化しつづけ、現在ではごく基本的な機能しか持たなくなりました。細菌Riegeriaは、Paracatenulaの身体のほとんどを満たす特別な組織「栄養体部」の中で生きています。下の写真で白く見える部分が栄養体部で、それ以外の上の部分は透明でスケスケですね。
Riegeriaは、光合成の代わりに化学プロセスによりエネルギーを生む「化学合成」を行います。二酸化炭素と硫化水素の反応を利用して有機化合物を作り、それをParacatenulaに与えるのです。これらの化合物には、脂質・タンパク質・糖質・脂肪酸・ビタミンまでもが含まれているのだそう。まさに完全栄養食です。