ひっくり返るとフリーズ?サメに見られる不思議な現象
トニック・イモビリティとは、一時的に自発運動が停止される生理的反応で、哺乳類や鳥類、魚類など広い範囲の動物に見られます。
特にサメやエイの一部では、体を背腹方向にひっくり返す、つまり「逆さま」にすることで、この状態が誘発されることが知られています。
この状態に入ると、筋肉は弛緩し、呼吸だけを続けながらじっと動かなくなるのです。
動物園や研究施設では、この性質を利用してサメを一時的におとなしくさせる場面もあります。

しかしこの反応の「意味」は長らく謎でした。
サメが「死んだふり」をして捕食者から身を守っているのか?
それとも交尾時にメスがこの状態に入ることで争いを避けているのか?
あるいは刺激が強すぎると感覚を一時的にシャットダウンしてしまうのか?
そこで研究チームは今回、13種のサメやエイ、ギンザメを対象に背腹反転(逆さま)によるトニック・イモビリティ反応の有無を調べ、その進化的な分布を詳細に解析。
その結果、この現象はサメの中でも一部の種だけに見られ、他の種ではまったく現れないことが明らかになったのです。