まるで果樹園 完璧な共生関係
縮小したゲノムの単細胞細菌が複数の栄養素を生み、宿主にそれを提供するという共生のかたちは大変珍しく、宿主への栄養の届け方もユニークです。
化学合成を行う共生細菌にエネルギーを依存することが知られている生物は通常、細菌を消化することでその栄養素を得ます。また、そうした細菌は輸送タンパク質を使って栄養を運びます。
ところが、ParacatenulaとRiegeriaの関係には、これらのメカニズムのどちらも当てはまりません。代わりにRiegeriaは、栄養素を小さな液滴のかたちにすることで、Paracatenulaにせっせと食事を提供しつづけます。このためParacatenulaは、Riegeriaを一切傷つけることなく食べ物にありつけるというわけです。
研究チームの1人であるマックス・プランク研究所のハラルド・グルベール・ヴォディッカ氏は、その様子を果樹園に例えています。Riegeriaが絶え間なく実らせる果物をParacatenulaがぱくぱくと食べるイメージで、見た目からは想像もできない、なんとものどかな感じですね。これに対して、細菌が完全に食べつくされてしまう他の共生形態は、トウモロコシ畑での収穫に例えることができます。
その上、Riegeriaが提供する栄養素は余すところなく使われるため、Paracatenulaは排泄器官を持たなくても問題ありません。
両者が欲しいものを手に入れて、どちらも何かを失うことがない共生システムを築いたParacatenulaとRiegeria。持ちつ持たれつのパーフェクトな協力体制ですね。
https://nazology.kusuguru.co.jp/archives/35515