Point
■これまで超伝導に至る温度の最高記録は-58℃だったが、一気に記録更新して-23℃での実現が報告された
■超伝導は電気抵抗が0になり、磁界が完全に弾かれるという不思議な現象、これが常温で実現されれば超高速通信や電力の保存など夢の技術が実現可能になる
■ただ、今回の報告は170GPa(ギガパスカル)というとてつもない高圧状況下のため、今後は常圧での実現を目指すことが課題となる
常温(摂氏0度)超伝導という現象については、たびたび耳にすることがあると思う。
超伝導は導体(電気を流す物質)の電気抵抗が0になるという現象で、通常、絶対零度(-273℃)という極低温でしか確認できない。
今回のニュースを聞いて-23℃の何が高温なの? と思った人もいるかも知れないが-273℃付近が当たり前と聞けば、それがいかにすごいことか理解できるだろう。
これは半年前にも報告されていたものだが、その段階では信憑性を疑う声も存在した。それが今回、査読・検証を通過し、正式な成果として科学の場で認められたのだ。
ただ残念ながら、この研究の超伝導では、高温と引き換えに超高圧の環境が必要となってしまっている。コスト的な面を考えればプラマイ0と言えるだろう。しかし、限りなく常温に近い温度でも超伝導を可能とする材料を確認したというのは、かなり素晴らしい快挙だ。
この研究報告は、シカゴ大学の研究者たちにより発表され、正式な科学的報告としてNatureに掲載されている。
https://www.nature.com/articles/s41586-019-1201-8
超伝導とはそもそもなんなのか?
導体の電気抵抗が0になるすごさは、普通に生活しているとさほど感じないかもしれない。
しかし電気抵抗によるロスというのは非常に大きく、現在は発電した電気の数10%近くは、電気抵抗によって失われているのだ。
携帯電話の中に金が使われているという話を聞いたことがあるだろうが、なんでわざわざ高価な金を使うかと言うと、その電気抵抗が極めて小さいからだ。
電気抵抗を減らすためなら金でも使う。世の技術者たちはそれくらい電気抵抗というものに苦しんでいるのだ。
また、電気というものは使いやすい反面、そのままの形で保存することができない。バッテリーなどは化学反応を利用して擬似的に電気を貯蓄しているもので、発電所レベルの電力を保存する方法は現状世界に存在しない。
必要なら常にその都度作らなければならないのだ。だが、電気抵抗0の回路が作れたら、そこに電気を還流させて置くだけで電気の保存が可能になる。
他にも超伝導は磁界を弾くという特殊な性質を持っている。これは磁石の上に安定して浮き続けることができる状態を意味しており、リニアモーターカーなど、近未来の乗り物に応用できる可能性を秘めているのだ。