
Point
■太陽光から電力を作ると同時に水を浄化する、従来品より効果の高い太陽蒸留器が開発された
■太陽電池で温めた汚染水を蒸発させながらろ過し、その際に放出された熱で次の汚染水を温めるという仕組み
■広大な土地と大掛かりな据え付け工事を必要とする2つのシステムを1つに凝縮することで、コンパクト化が可能
世の中には、水を運ぶだけで毎日3時間以上かけることを余儀なくされている人々が7億8千万人以上存在すると言われている。
サウジアラビアの研究で、こうした人々の生活に革命をもたらす装置が開発された。
太陽光から電力を作りながら、それと同時に水を浄化することができるという「一石二鳥の装置」だ。
開発を行ったのは、サウジアラビアのキング・アブドゥッラー科学技術大学のPeng Wang教授ら。論文は、雑誌「Nature Communications」に掲載されている。
https://www.nature.com/articles/s41467-019-10817-6
現在広く用いられている浄水技術は、大量の電力消費を伴うだけでなく、大規模なインフラ整備を必要とする。安全な水が不足している地域にとっては、とうてい手が届かない代物だ。
だが、この新しい装置はそうした課題を上手く解決してくれるという。
温めながらろ過する効率的な仕組み

その装置の仕組みとは、以下のようなものだ。
まず一番上の層に、商業用シリコンでできた太陽電池を水平に置き、その下にいくつかの層から成るろ過層を組み込む。このろ過層を、塩分や汚れを含んだ汚染水が通過する。
太陽電池が放出した廃熱によって急速に温められた汚染水は、ろ過層を通りながら蒸発し、凝縮されて浄水となる。それと同時に、汚染水が蒸発する際に放出された熱が、今度は下の層を流れる汚染水を温める。このプロセスを繰り返しながら、装置から染み出した浄水が回収されるというわけだ。
研究チームによると、塩水だけでなく、重金属で汚染された海水も、WHOが飲料水として定めた鉛・銅・ナトリウム・カルシウム・マグネシウム含有量の安全基準を下回る状態の浄水に変換することが可能だという。
実際の数値を見ると、雲のない晴れの日と同等の条件下では、太陽電池のエネルギー効率はおよそ11%とのこと。これは、同種の装置を開発している他の研究者によって過去に報告された数値を上回る。こうした太陽蒸留器はこれまでも開発されているが、新たな装置は、海水から浄水への変換率が従来の太陽蒸留器より高い。