
- 電気信号によって脳が刺激された初心者パイロットは学習パフォーマンスが33%向上した
- 加速学習は運転、試験、言語にも応用され、日常的になるかもしれない
映画『マトリックス』では、知識を直接脳に送りこむことで瞬間的にカンフーを習得できるシーンがあります。
現時点ではこのような「知識のアップロード」は不可能ですが、再現へと近づいていることは確かです。
HRL Laboratoriesの研究者たちは、脳に電気信号を送ることによって、高度なスキル習得を加速させることに成功しています。この実験により、被験者の学習パフォーマンスは33%向上したとのこと。
研究の詳細は2016年2月9日「Frontiers in Human Neuroscience」誌に掲載されました。
Transcranial Direct Current Stimulation Modulates Neuronal Activity and Learning in Pilot Training
https://www.frontiersin.org/articles/10.3389/fnhum.2016.00034/full
パイロットのスキル取得を加速させる

通常、スキルを習得するためには知識と経験が必要になります。経験したことを記憶し、他の知識や能力と関連付ける必要もあるでしょう。
この学習プロセスには脳の働きが関係しているので、研究者たちは脳に電気信号を送ることで学習効率を向上させる方法を考え出しました。
研究の対象となったのは、「パイロットのフライト訓練」です。航空機の操縦には広範囲な訓練と実践でのみ身につくスキルが不可欠です。
複雑なパイロットのスキル習得効率を向上させることができるなら、この学習加速法は「実際的」だと言えるはずです。
最初に、研究者たちは、民間及び軍のパイロットの脳活動パターンを測定しました。それらを初心者の脳活動パターンと比較し、脳の働きの違いを観察しました。
次に、そのデータに基づいた電気信号を作成し、初心者の脳に送り込むようにしました。
「脳への電気信号送信」には電極埋め込み型のヘッドキャップを使用します。
初心者である被験者たちは、ヘッドキャップによって脳刺激を受けながらフライトシミュレーターで飛行訓練を受けました。
この学習加速法には、経頭蓋直流刺激(tDCS)が用いられます。
tDCSとは電極により脳に電気を流す手法ですが、電流を調整することにより脳内電流の誘導を可能にします。
tDCSによって刺激された領域のニューロンは変調することが判明しています。このニューロンの変化は脳機能の変化に繋がります。
作業記憶には右背側前頭前野が関係しているため、フライトシミュレーションの過程でこの分野をtDCSによって刺激し、作業記憶の向上と、変調されたニューロン機能と行動のリンクの強化を目指したのです。

























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