エサが海水から分離される過程
次に研究者たちは、粘液の家の用途として長年考えられていたエサを濃縮して本体に届ける「食品濃縮工場」としての役割を検証するために、取水口とおもわれる部分から蛍光性の溶液を注ぎました。
上の動画では、緑色の蛍光液が上下逆さに映っているラーバシアンの袋状の構造の中に流れて拡散してゆき、袋の外部を周るチューブの中に入り込んでいる様子が映されています。
以下ではその過程を3D画像を元に順に示します。
まず最初に、ラーバシアン本体の左右から海水が取り入れられ(上の図の緑のボール)、ラーバシアン本体の尾の動きにより海水が後方に開いた粘液ハウスの入口に海水が流されます。
そして後方から入った海水はフィルターの構造に従って、前方の2つの袋状の構造に向かいます(上の図の青のボール)。
袋状の構造は側面には複数のチューブ構造の入口が存在します。
海水がこの袋の中を進むと、不要な水は袋から滲み出て排出される一方で、エサはチューブに吸い上げられ最終的にラーバシアン本体の口元で合流するように作られています(上の図のオレンジのボール)。
また袋構造の上側に向けて滲み出た海水は、内側にある小さなスペースを経て、後方に開いた開口部から捨てられます(上の図の赤のボール)。
ラーバシアンの尾部の動きは、これら一連の食品濃縮過程を行う為の水流づくりのために動いているのでした。
遊泳に使われる尾部の動きが、推進力以外の目的を持つのは、非常に珍しいケースと言えます。
ただ海水の動きはわかったものの、なぜ能動的な選別機能なしに、食料が優先的にチューブに入り込むかはまだわかっていません。
そのため、もしこの秘密を解き明かすことができれば、非常に安価な粒子の濃縮装置や浄水装置の基本動作原理になると考えられます。