小さな海の生き物「ラーバシアン」は、粘液で自分の家を作る!?
小さな海の生き物「ラーバシアン」は、粘液で自分の家を作る!? / 意外にも、ラーバシアン本体の尾部の動きは粘液の家を推進させるちからはない/Credit:nature
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小さな海の生き物「ラーバシアン」は、粘液で自分の家を作る!?

2020.07.05 Sunday

point
  • 奇妙な原始的脊索動物は体外に立体的な粘液の家をつくる
  • 粘液の家は海水からプランクトンを分離して濃縮する食品加工工場だった
  • ラーバシアンの粘液のもつ複雑な構造を自律的につくる力を解明すれば「構造性の粘液」という新概念の素材になりうる

私たちのよく知る「クモ」は、体内から産出した糸を使って自分の周囲にエサを捕らえるトラップ構造を作ります。

Larvaceans(ラーバシアン)と呼ばれる大きさ1cmほどの原始的な脊索動物の一種も、体外に「家」と呼ばれる構造を作り上げることが知られています。

この家はラーバシアンから分泌される特殊な粘液から構成されており、粘液は体外に分泌されると、複雑なフィルター状の立体構造に自律的に変化します。

ただ、この粘液のフィルターがどのような役目をしているかは、長い間、明らかにはされませんでした。

なぜならラーバシアンの作る家は非常に脆く、僅かな接触によって容易に破壊され、元の構造がわからなくなってしまうからです。

ラーバシアンの本体をとらえて、実験室内でフィルターを作らせようとする試みも繰り返されましたが、環境の違いによるのか、ラーバシアンは水槽の中では粘液の家を作ってはくれませんでした。

ですが今回、アメリカの研究者によって、一切の物理的な接触を行わないまま、ラーバシアンの生態を明らかにできたそうです。

いったいどんな方法が使われたのでしょうか?

実験室まで運べないなら、実験室を海に沈めればいい

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側面部分の断層撮影。大きな横長の袋がチューブに取り囲まれたている様子がわかる/Credit:nature

ラーバシアンの粘液の家は実験室に運べず、ラーバシアン本体を捕らえても実験室では粘液の家を作ってくれません。

この厳しい条件を突破する手段として、アメリカの研究者たちは発想の転換を行いました。

研究者たちはDeepPIVと呼ばれる通常は実験室内で使われるレーザーシートイメージングデバイスを潜水艇に搭載し、研究装置ごとラーバシアンの元に向かったのです。

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スキャンによって明らかになったラーバリアンの粘液の家の全景/Credit:nature

DeepPIVは非常に高性能な分析装置で、スキャンによって粘液の詳細な断面図構造を作成できます。

また、同時に3次元構造を構成できるだけでなく、粘液の内部を流れる海水の動きも記録可能です。

結果、上の図のように研究者たちはラーバシアンの粘液ハウスのほぼ完ぺきな構造データを取得することに成功しました。

また構造の分析から、興味深いことに、ラーバシアン本体の尾部の動きには、粘液ハウスをけん引する力がないこともわかりました。

これは、ラーバシアンの尾部は遊泳以外の目的で動いていたことを意味します。

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