たいせつな「乳牛」を守る
甘露がアリの貴重な食料になる一方で、アブラムシはとても弱い生き物です。
からだは柔らかく、栄養液の詰まった水風船のようなもので、すばやく逃げることもできません。
そのため、クモやテントウムシ、ハナアブの幼虫に狙われやすく、襲われたら高い確率で死んでしまいます。
そこでアリは、たいせつな「乳牛」であるアブラムシを守るため、天敵から保護するのです。
ずっとアブラムシの側にいて、敵がやってくると追い払います。
それから、アブラムシが甘露(オシッコ)を垂れ流しにすると、カビが発生してアブラムシ自身も不潔な環境で暮らさないといけません。
また、カビが繁殖すると植物が病気になり、師管液の質も落ちます。すると、アリが欲している甘露もマズくなるのです。
アリとアブラムシはお互いになくてはならない共生関係を築いており、実際にアリがいないとすぐに死んでしまうアブラムシもいます。
とはいっても、そこは弱肉強食の世界。
アリたちは、アブラムシが増えすぎたり、甘露を出さなくなったりすると間引きして食べてしまいます。
その点も、人が乳の出なくなった牛を肉牛にするのと似ていますね。
アブラムシを「ありまき(蟻牧)」と呼ぶ理由はここにあったのです。