おうし座にあるヒアデス星団のコア。星団のメンバーとなる星をピンク色で示している。
おうし座にあるヒアデス星団のコア。星団のメンバーとなる星をピンク色で示している。 / Credit:ESA/Gaia/DPAC, CC BY-SA 3.0 IGO; acknowledgement: S. Jordan/T. Sagrista.
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太陽系からもっとも近いヒアデス星団が、見えない「何か」に破壊されていた (2/2)

2021.03.28 Sunday

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星団を破壊した見えない塊

これまで見ることのできなかったヒアデス星団の潮汐尾を明らかにした今回の研究ですが、そこには予想と異なる状態が見つかりました

星団の潮汐尾に含まれる星の数は、前方の尾と、後方の尾で違いはないはずだと考えられていました。

しかし、観測データとシミュレーションを比較するとヒアデス星団の潮汐尾は、後方の星を失っているように見えたのです。

これは星団が、単にゆっくりと引き伸ばされたわけではなく、なにか劇的な変化を経験していたことを示唆しています。

そこで、研究チームはさらに詳細なシミュレーションを実行し、なにか巨大な塊と星団が密接な相互作用を起こした場合に、現在のような状態になるということを突き止めたのです。

約6億5000万年前から現在までのヒアデス星団の進化
約6億5000万年前から現在までのヒアデス星団の進化 / Credit:Jerabkova et al., A&A, 2021

これは約6億5000万年前から現代までのヒアデス星団の進化の様子をシミュレーションしたものです。

画面の左側は天の川銀河の概略図で、黄色い部分がヒアデス星団です。

画面右側は、ヒアデス星団周辺の拡大図です。

どちらの画像でも灰色で示される塊は、分子雲や他の星団など何らかの重力源を示しています。

このGIF画像では、シミュレーションの最後の瞬間を少しスローに編集しましたが、最後の瞬間に何かがヒアデス星団に衝突しているのがわかります。

シミュレーションの最後のフレームの切り出し。
シミュレーションの最後のフレームの切り出し。 / Credit:Jerabkova et al., A&A, 2021

わかりづらいので最後の部分だけを切り出すと、このように星団に何かが衝突して星の位置を乱しています。

研究チームによると、星団にぶつかったのは太陽質量の約1000万倍におよぶ何らかの塊だといいます。

それは分子雲(星雲のようなガス塊)かもしれませんし、他の星団かもしれません。

しかし、現在星団の周辺を観測しても、この衝突源と考えられるような目に見える構造は見当たらないのです。

星団を破壊するほどの重力源が、検出できないということは通常考えられません。

そのため、研究チームはこれが暗黒物質のサブハローであった可能性を考えています

暗黒物質は集まって塊のようなものを作っています。これをダークマターハローといい、銀河形成の元にもなっています。

その中には、もっと小さな暗黒物質の集団もあると考えられており、これはサブハローと呼ばれます。

ヒアデス星団を破壊した塊は、現在も捜索中ですが、今後も検出できない場合、それは暗黒物質の塊によって破壊された可能性がかなり高いと言えるでしょう。

今後も同様の痕跡が、銀河の周辺で見つかった場合、見えない暗黒物質をマッピングしていくための貴重な情報源になる可能性もあります。

宇宙には、まだまだ未知のダイナミックな天体が隠れているのかもしれません。

【編集注 2021.04.02 19:30】
記事内容に一部誤りがあったため、修正して再送しております。

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