ハエを元に進化させた自動運転シミュレーション
なんでハエ? と疑問に感じる人も多いかもしれませんが、昆虫はさほど複雑な脳を持たないにもかかわらず、さまざまな状況に柔軟に対応しています。
ショウジョウバエは熱源を巧みに回避する行動を取ります。
これはハエが学習・記憶を利用し柔軟に意思決定をしていることを示すものです。
ハエはどうやって、その行動を実現しているのでしょうか?
「この疑問に答えることは、安全で柔軟な自動運転車をプログラムするために、何が必要か考える問題と似ています」ノースウエスタン大学の神経生物学准教授であるマルコ・ガリオ氏はそのように研究の背景を説明します。
昆虫の行動について、多くの人は単純なスクリプト制御やシーケンス制御に近いものだろうと考えがちです。
それは機械的で大部分が固定された動作です。
しかし、ガリオ研究室はそれが一般的に考えられているほど、単純なものではないことを発見しました。
研究では、4枚の温度が違う床タイルを備えたプラスチック製の部屋にショウジョウバエを閉じ込め、その行動を監視してみました。
するとショウジョウバエは、温度の異なる境界をまるでバリアのように扱い、巧みに回避して飛行したのです。
研究チームは、この実験中のハエの動きを再現する3Dモデルを作成するとともに、ハエの脳を開いて温度信号を処理するニューロンの脳活動を記録しました。
この結果、ハエは好みの温度にとどまるために、最適な経路が左右どちらにあるかということを驚くほど正確に判断できることがわかったのです。
熱源に近づいたとき、ハエは迅速な判断を行います。
このハエの行動を観察していた研究チームは、このときある古典的なロボット工学のコンセプトを思い出したと言います。
それはブライテンベルクビークルと呼ばれるものです。