脳に電極を刺して異常回路を遮断する
脳は無数の神経回路から構成される電気的な器官です。
神経回路がつながり活性化すると健康な人間は快楽を得たり、苦しみを感じたりします。
一方、強迫性障害の患者は、特定の回路が異常活性化し、刺激が何度も繰り返されます。
その結果何度も鍵の閉め忘れが気になったり、汚れが気になって手を洗い続けるなどの症状が現れるのです。
そのためかつては、異常を起こしている回路ごと、脳の一部を切り取るという、ロボトミー的な手術が行われてきました。
しかし脳の切除はたとえごく一部であったとしても、後戻りのできない変化を精神に与えてしまうことが問題視されています。
そこで近年アメリカなどでは、異常を起こしている回路の封鎖手段として、脳に刺し込んだ電極による脳深部刺激療法(DBS)が注目されるようになってきました。
電極から放たれる電撃が脳細胞をある種の麻痺状態にすることで、神経回路を遮断して、強迫的な行動を抑制するのです。
ただ問題は、電極を埋め込む位置でした。
人間の脳は個人差が非常に大きい臓器であるため、最適な刺激位置は患者ごとに異なります。
そこで今回、研究者は意識のある状態で患者の脳を開く手術を行いました。