慢性社会的敗北ストレス状態にしたマウスの腸内環境が乱れる仕組みを解明!
近年の急速な微生物学と神経科学の進歩により、脳と腸が非常に密接に関係していることが明らかになってきました。
精神的な異常は腸内環境を乱し、腸内環境の乱れは精神的な不調を引き起こします。
しかし数多くの研究にもかかわらず、精神状態が腸内環境に影響を与える仕組みは不明でした。
そこで今回、研究者たちは強制的にうつ状態にした「慢性社会的敗北ストレスマウス」の腸内分泌物を調べ、健康なマウスとの違いを比較しました。
慢性社会的敗北ストレスはマウスの縄張り意識を利用して作られる状態です。
強いマウスの縄張りに弱いマウスを入れ、1日5分の直接的攻撃、穴の開いたアクリル板ごしの24時間の精神的攻撃の組み合わせを10日間に渡って繰り返すことで作られます。
今回の研究では攻撃されるマウスの負傷可能性を減らすために、直接的攻撃を初日の5分を上限とし、徐々に時間を減らして繰り返しました。
慢性の社会的な敗北状態に陥ったマウスは人間の「うつ」に似た状態に陥り、引きこもりや快感喪失(楽しいと思えなくなる)などを引き起こすほか、好物である砂糖水への興味を消失するなど、大きな肉体的・精神的変質を引き起こします。
マウスが社会的敗北ストレス状態に陥ったことを確認すると、次に研究者たちはマウスの腸内分泌物を調べました。
結果、αディフェンシンと呼ばれる、一種の抗菌ペプチドの分泌量が大きく減少していることが判明します。