カマキリはなぜ「入水」に追い込まれるのか?
今、地球上に存在する生物の約40%は寄生生物と言われています。
あらゆる動物は少なくとも一種の生物に寄生されており、そのせいで、形態や行動に影響が出ているかもしれません。
その宿主操作の代表例が、ハリガネムシに感染したカマキリです。
ハリガネムシはもともと水中に住んでいますが、幼生時にほかの水生昆虫に寄生し、その昆虫が羽化して陸上に出て、カマキリに食べられることで、最終的な宿主をカマキリとします。
そして、成熟するまでカマキリの体内で過ごし、時が来るとカマキリを入水させて、再び水中へと戻るのです。
以前の研究によると、「宿主は水面の反射光の明るさに誘引されているのではないか」と指摘されていました。
しかし、光の反射するポイントは、池や川のほかに河原の小石や草むらなど、たくさんあります。
宿主がそれらにいちいち引かれていると、ハリガネムシの入水操作は失敗するでしょう。
そのため、単純な明るさだけでは、入水行動が起こる理由を説明できません。
一方で、光には、電磁波の振動方向が規則的な「偏光」という性質があります。自然光は無規則に振動していますが、空気中の粒子やモノに当たると偏光します。
中でも、水平偏光(振動方向が水平に一定になった偏光)を多く含むのが、水面からの反射光です。
近年、節足動物の多くが、水平偏光を目印に水辺に近づいたり、回避することが分かってきています。
そこで研究チームは「ハリガネムシに感染したカマキリも、水平偏光に引かれて入水しているのではないか」と仮説を立てました。