サイフォンの原理ってなに?
サイフォンというのは、水槽に溜めた水の中に液体が満たされた管を入れたとき、その管の終端が水面より低い位置にあれば、たとえ途中で出発点より高い位置を通っていたとしても、水を吸い上げるようにして流すことができる装置のことです。
高低差さえ作れば、動力無しで水を押し流すことができるこの仕組は、非常に便利なため現代でも水洗トイレや、灯油のポンプをはじめさまざまな場所で利用されています。
そして単純ながら強力なこの仕組は、紀元前の昔からすでに人々に知られていました。
ローマ水道などもサイフォンの原理を利用して、途中で低い土地を通ったりしても問題なく都市まで水を運んでいました。
日本でも、石川県にある金沢城は、兼六園に溜めた池の水を場内まで引き込む引き込むために、サイフォンの原理を利用しています。
このように古くから知られていたサイフォンは、当然ピタゴラスも知っていました。
そこで彼はこの仕組を利用して「貪欲なカップ」といういたずらを思いついたのでしょう。
ピタゴラスの目的がなんだったのかはよくわかりませんが、おそらくは、人々にほどほどにお酒を飲ませ、節度を教えるためだったと想像されています。
欲張ってしきい値を超えたワインをカップに注いだ者は、たちまち貴重なワインをすべて床にこぼしてしまうのです。
このカップを使った欲張り者の落胆は大きかったでしょう。
これは非常に優れたデザインだったため、その後の時代でも世界各地に同系のカップが伝わっています。
日本の長岡藩では十分盃(じゅうぶんはい)の名で伝わっており、中国でも公道杯という名で同型の盃が存在しています。
こうした発明を見るだけでも、ピタゴラスがいかに優れた人物だったかがうかがい知れます。
※この記事は2021年公開の記事を再編集したものです。