宇宙生活により約3000個もの遺伝子のロックが解かれていた
宇宙で過ごしたオスマウス(以下、宇宙マウス)の生殖能力に変化はあったのか?
研究者たちは答えを得るために、精巣の生殖細胞を詳しく調べてみました。
結果、不要な遺伝子の働きを抑え込む「ATF7」が2928個もの遺伝子から、脱落していることが判明します。
生物の体は、設計図であるDNAの書き換えによって変化する一方で、特定の遺伝子を働かないように「ロック」することでも変化します。
ロックはDNAの書き換えを行わないマイルドな変化ですが、ロックの位置は精子や卵子に乗って次世代に受け継がれるため、結果として子孫の遺伝子の働きを制御することになります。
特に、常に生産される精子の遺伝子は、その時々のオスの体調を反映してロックがかけられるため、オスの経験を反映した精子が作成されることになります。
ですが、実際に子どもを作ってみなければ、次世代に変化が遺伝したかどうかを確かめることはできません。
そこで研究者たちは宇宙マウスの精子を用いて子マウスを作り、遺伝子の働きに変化がないかどうかを調べました。
すると子マウスは全て健康ではあったものの、肝臓において19個の遺伝子の発現が上昇し、5個の遺伝子の発現が低下していることがわかりました。
また興味深いことに発現が上昇した遺伝子には、厳しい環境でも正確にDNAを複製するための遺伝子が含まれていました。
また発現が上昇した遺伝子の3分の1は「ATF7」によるロックから解き放たれたものと重複しました。
この結果は、宇宙生活という経験が親マウスの生殖細胞の遺伝子に課せられてたロックを解除し、その影響が子マウスの遺伝子の働きにも及んでいた可能性を示します。