ウイルスサイズの「ナノカプセル」の作り方
生体分子ナノテクノロジーを専門とするヘンドリック・ディーツ氏(TUM)は、コロナのパンデミックが世間を騒がせる以前から、ナノカプセルの研究を進めていました。
ディーツ氏は、ウイルスのエンベロープ(ウイルス粒子に見られる膜状構造のこと)に注目しています。
エンベロープを構成する幾何学的原理は1962年に発見されており、同氏と研究チームは、この原理にもとづいて、ウイルスサイズの人工的なカプセルを作れないかと考えました。
さらに2019年の夏、このカプセルを一種の「ウイルストラップ」として利用することを思いつきます。
カプセルの内側にウイルス結合分子を並べれば、ウイルスをくっつけて、つかまえることができるはずです。
そのためには、カプセルに十分な大きさの開口部を設け、そこからウイルスを侵入させる必要があります。
そこでチームは、20個の三角形からなる正二十面体から出発して、ナノカプセルを3次元上で作ることにしました。
DNAプレートをより大きな幾何学的構造に組み立てるには、エッジをわずかに面取りする必要があります。
それからエッジの結合点を正しく配置することで、プレートが目的の形に自己集合するようになります。
ディーツ氏は「このようにして、三角形のプレートを使って、目的のオブジェクトとサイズを自由にプログラムできるようになりました。
今では、最大180個のサブユニットを使って、95%の精度でカプセルの生成に成功している」と話しています。
チームは次に、このナノカプセルを用いて、ウイルストラッピングのテストをしました。