水分子の層でイオンを制御する
今回の研究チームが考えたのは、導電性のグラフェンの層の間に水分子の非常に薄い単層を挟むというものでした。
これが電場の影響下にあると、水分子層のイオンが集合して細長いクラスターを作り、ニューロンのイオンチャネルと同じような機能を果たすというのです。
これは過去に受けた刺激の一部を保持することもでき、電源がない状態でも記憶を残すことができます。
結果として、これはグラフェンと水分子の層によって形成された人工ニューロンになるというのです。
まだ、これは理論として発表されただけですが、実際にこの理論を元にデバイスを作ることができれば、非常に低電力でフラッシュメモリよりも使い勝手の良い記憶媒体が生まれることになるかもしれません。
また、脳のニューロンと同様の振る舞いをするこのデバイスは、人間の脳に組み込めるデバイスとなる可能性もあるといいます。
イーロン・マスク氏は、脳にコンピュータチップを埋め込む「Neuralink」というシステムの開発も計画していますが、こうした技術はそんな人間と機械の融合に貢献する可能性があるのです。
ただ、コネチカット大学の認知心理学者スーザン・シュナイダー氏は、「こうした技術はあなたの心の内にある考えなどを記録して、それをデータとして売買の対象にしてしまう恐れがある」という警告も発しています。
AIと仕事を取り合うような時代になれば、嫌でも人間はこうしたブレインチップの導入を認めざる負えなくなるだろう、ともシュナイダー氏は語っていて、そうなれば思考が盗聴されるという話も現実になってしまうかもしれません。
さすがに最後の未来予想は、今回の研究からだいぶ飛躍した話ですが、人間の脳機能と近い働きをするデバイスの研究には多くの可能性が秘められています。