日本の伝統技術の融合【折り紙×切り紙】で生まれた「オリキリガミ」構造
近年の私たちの生活には、ウェアラブルデバイスやフレキシブルディスプレイが欠かせなくなってきました。
腕に巻き付けられる健康モニターや、折りたたみ式のスマートフォンなどはすでに市場に登場しており、さらなる発展が期待されています。

しかし、それらの技術を支える「電子回路」には大きな課題があります。
多くの電子部品—とりわけLEDや半導体チップなど—は、金属やセラミックといった硬く壊れやすい素材でできているため、大きく曲げたり伸ばしたりする構造に組み込むのが困難なのです。
従来、この問題に対するアプローチは2つありました。
1つは素材そのものを柔らかくする方法で、有機材料などが用いられます。
しかし、これらは性能や安定性の面で限界があります。
もう1つは構造的に柔軟性を持たせる設計上の工夫で、硬い素材をそのまま使いながら構造を変えて柔軟性を持たせます。
後者の構造的な柔軟性の分野では、折り紙や切り紙の構造が注目されてきました。
折り紙構造は、平らな面に折り線を入れることで、変形を限定された方向に導く技術であり、硬い電子素子を載せやすいという利点があります。
しかし同時に、多数のユニットを一括して折り畳むことは難しいという課題を抱えています。
一方、切り紙構造は、構造全体を引っ張ることで簡単に変形させることができますが、電子素子を載せるのに適した平らな面が少ないという欠点を抱えていました。

そこで今回、早稲田大学の研究チームは、これら2つの構造を融合し、互いの長所を生かして短所を補う新しい構造「キリオリガミ構造」を考案しました。
この構造は、切り紙構造に折り線を加えることで、電子部品の取り付けに適した平面を確保しつつ、引張変形によって多数の折り線を一括で折り上げることを可能にしています。
つまり、「硬くて壊れやすい電子素子を安全に載せられ、なおかつ柔軟に変形できる」という夢のような構造が実現されたのです。
次項では実際にオリキリガミ構造が動作する様子を見てみましょう。