新しい「オリキリガミ構造」により伸びる電子回路を実現

このキリオリガミ構造を正確に動作させるため、研究チームは2つの技術的な工夫を施しました。
1つ目は「バッファ構造の導入」です。
これは構造の端に「ばね」のように変形する部分を加えることで、引っ張る力を均等に伝えるという仕組みです。
これにより、構造端部で発生しやすいひずみやねじれを抑え、面全体に均一な力を伝えることで、安定した折り畳みが可能になりました。
2つ目は「二軸引張の制御」です。
縦と横の両方向にバランスよく引っ張ることで、折り線以外の部分に無理な力がかからず、意図したとおりに正確に変形が進むようになります。
そして研究チームは、新しいキリオリガミ構造の性能を実証するため、「145個のLEDチップを取り付けたフレキシブルディスプレイ」を試作しました。
このディスプレイには512本もの折り線が存在し、全体を引っ張ることで自動的に折り上げが行われます。

結果として、伸縮させてもすべてのLEDが正常に点灯し続けることが確認されました。
硬い電子部品を使いながらも構造によって柔軟性を確保できたのです。
この技術により、これまで困難だった「高性能電子部品のフレキシブル化」が現実のものとなるかもしれません。
今後、「衣服や肌に密着するウェアラブル機器」「折りたためるスマホ」「柔らかく安全な人間支援ロボット」への応用が期待されます。
また、折り紙・切り紙の構造力学と電子工学の融合という点においても、機械工学や材料科学の分野に新しい波をもたらすことでしょう。
研究者らは、既に国際的な学術用語になっている「『Origami』『Kirigami』に続いて、『Kiri-origami』という単語も広まってほしいと語っています。
日本の伝統が、世界の未来を変える鍵になるかもしれません。