長い耳で敵の音を聞き、体の熱を逃がす。
ほぼ360度を見わたし、跳ねて逃げる草食の哺乳類。
- ナゾロジーの記事
- 13本
- 見わたせる範囲(視野)
- ほぼ360度
- ノウサギのなかまの最高速度
- 80km/h
ウサギは、ウサギ目ウサギ科の哺乳類です。長い耳と長い後ろ足をもち、草や木の皮を食べます。ペットのウサギはヨーロッパのアナウサギを家畜にしたもので、日本の野山にはニホンノウサギ、奄美大島と徳之島にはアマミノクロウサギがすんでいます。
図鑑データ
- 分類
- 哺乳類 › ウサギ目(兎形目)› ウサギ科
- 学名
- Leporidae(ウサギ科)。ペットのウサギは Oryctolagus cuniculus(アナウサギ)
- 英名
- rabbit(ラビット)、hare(ヘア。ノウサギのなかま)
- 漢字
- 兎
- 種の数
- 70種あまり(11属)。そのうちノウサギ属が32種
- 大きさ
- 種によってちがい、ノウサギのなかまは大きめ。アナウサギは体重1.5〜3kg
- 体のつくり
- 長い耳と後ろ足。ほぼ360度の視野。上の前歯は2対あり、歯はすべて一生のびつづける
- すみか
- 草原、森、砂漠、ツンドラ、湿地など。もとは南極とオーストラリアをのぞく大陸にすみ、今は人が持ちこんだものも各地に
- 日本では
- ニホンノウサギ(本州・四国・九州)、エゾユキウサギ(北海道)、アマミノクロウサギ(奄美大島・徳之島)。大久野島などに野生化したアナウサギ
- 食べもの
- 草、木の葉や芽、樹皮、果実など。盲腸でつくったやわらかいふん(盲腸便)も食べる
- 増え方
- 交尾がきっかけで排卵する。アナウサギは妊娠期間30日ほどで、1回に3〜7匹を年に4〜5回産む
- 寿命
- 野生では1〜5年ほど。飼育下では種によって4〜13年、最長記録は18歳
ウサギとは(何類? 何目・何科?)
ウサギは、哺乳類の「ウサギ目(兎形目・重歯目とも)」の「ウサギ科」に入る動物のなかまです。長い耳と、長くて力強い後ろ足をもち、草などの植物を食べてくらしています。ウサギ科には今、70種あまりがいて、11の属に分けられています。
日本語の「ウサギ」は、ノウサギもアナウサギもふくむ呼び名です。英語では、ふつうノウサギ属(Lepus)のなかまを hare(ヘア)、それ以外のウサギ科のなかまを rabbit(ラビット)と呼び分けます(例外もあります)。ペットとして飼われているウサギ(カイウサギ)は、ヨーロッパの「アナウサギ」を家畜にしたもので、分類ではアナウサギと同じ種です。
ネズミのなかま?(上の前歯が2対)
ウサギは、前歯が一生のびつづけることなどから、昔はネズミと同じ齧歯目(げっしもく)に入れられていました。1912年に、ナキウサギとともに「ウサギ目」として分けられました。大きなちがいは歯です。ネズミのなかまの前歯は上下1対ずつですが、ウサギは上の大きな前歯のすぐ裏に、小さな前歯がもう1対あります。また、ネズミのなかまの多くは前歯だけがのびつづけますが、ウサギは奥歯もふくめて、すべての歯がのびつづけます。
ただし、ウサギとネズミは遠い他人ではありません。DNAなどの研究から、ウサギ目と齧歯目は共通の祖先をもつ近い親せきと考えられていて、2つをあわせて「グリレス類」と呼びます。ウサギ目のなかまが現れたのは、今から5000万〜5500万年ほど前と考えられています。
同じウサギ目には、ナキウサギのなかま(ナキウサギ科)もいます。名前に「ウサギ」がつきますが、ウサギ科とは別の科です。ウサギ科のなかまとちがって耳は短く丸く、後ろ足も長くありません。日本では、北海道の高い山の岩場にエゾナキウサギがすんでいます。

ノウサギとアナウサギのちがい
ウサギ科のなかまは、「ノウサギ」と「アナウサギなどのウサギ」に分けて考えるとわかりやすくなります。ノウサギ属は32種で、ウサギ科のおよそ半分をしめます。英語で jackrabbit(ジャックウサギ)と呼ばれるものも、ノウサギのなかまです。
- ノウサギのなかま:ふつうアナウサギなどより体が大きく、妊娠期間も長めです。巣穴はほとんど掘らず、地面のくぼみで休みます。子どもは毛が生えそろい、目も開いた状態で生まれ、生まれてすぐに動けます。敵からは、走って逃げきります。
- アナウサギなどのウサギ:アナウサギは地面にトンネルを掘り、たくさんの巣穴がつながった「ウォーレン」で群れになってくらします。子どもは、毛がなく目も閉じた状態で、巣穴や巣の中で生まれます。敵からは、巣穴や草むらにかくれて身を守ります。
ペットのウサギはアナウサギの子孫で、ノウサギは家畜にされたことがありません。名前に「ヘア」がつくベルジアン・ヘアも、ノウサギに似せて改良されたカイウサギの品種です。

大きさと体のつくり(耳・目・鼻・歯の能力)
ウサギ科のなかまは、どれも似た体つきで、大きさのはばもあまり広くありません。陸の哺乳類にはめずらしく、ウサギ科ではほとんどの場合、メスのほうがオスより大きくなります。ペットのウサギのもとになったアナウサギは、体重1.5〜3kgほどです。
なぜもっと大きなウサギがいないの?
2021年に発表された研究は、ウサギのなかまがあまり大きくならない理由を調べました。今の世界の各地域を比べると、そこにいる有蹄類(ウシやシカ、ウマなどのなかま)のうち、いちばん小さな種の体重が、ウサギ目の最大の体重をもっともよく説明していました。エネルギーの使い方から計算すると、体重がおよそ6.3kgをこえるウサギ目は、偶蹄類(シカやウシのなかま)との競争で不利になると考えられ、これは大陸のウサギ目で見られる大きさの上限とよく合っていました。北アメリカの3750万〜150万年前の化石の記録でも、ウサギ目の最大の体重は、同じ時代のいちばん小さな有蹄類に「ふた」をされるように変わってきたことが示されました。
ナゾロジーでくわしくもっと大きなウサギがいない理由を解明 他の草食動物が進化を抑圧していた?(京都大学)
- 耳:ウサギ科の耳は、ほかの哺乳類にくらべて長く、体の表面のかなりの部分をしめています。耳は、音のする方へ向けて動かせます。耳には血管がたくさん通っていて、流れる血の量を変えることで体温を調節します。ウサギには汗腺がほとんどないので、耳が熱を逃がす大切な場所になっているのです。暑い地域にすむウサギやノウサギほど耳が大きい傾向があり、気温が30℃をこえるときに熱を逃がすのに役立つと考えられています。
- 目:目は頭の横の高い位置についていて、ほぼ360度を見わたせます。ただし鼻すじの前は見えないため、口の真下にある食べものは、くちびるやひげでさぐります。網膜には、視細胞がとくに多く集まった横長の帯があり、頭をあまり動かさずに地平線を見張ることができます。
- 鼻:鼻には縦の割れ目があり、上の皮ふを動かして鼻の穴を開けたり閉じたりできます。のどのつくりから、ウサギは口ではなく鼻で息をします。
- 足:後ろ足は前足より長く、跳ねて走るのに向いています。指は前足に5本、後ろ足に4本です。多くの種では、足の裏にイヌやネコのような肉球がなく、かわりに毛が密に生えています。

一生のびつづける歯
ウサギ科の歯は、ふつう全部で28本です。上の前歯は、大きな1対のすぐ裏に小さな1対があり、犬歯はありません。歯はすべて一生のびつづけ、草などをかんですり減った分を、のびることでおぎなっています。
歯がのびつづけるには、材料のカルシウムがたくさん必要だと考えられてきました。けれども、すり減った歯は、細かな粉になって食べものといっしょに飲みこまれています。2025年に発表された研究では、メスのウサギに、カルシウムのもととして、ふつうの添加物(炭酸カルシウムなど)か、くだいたウサギの歯のどちらかを入れたえさを、15日ずつ食べさせました。すると、カルシウムが消化・吸収された割合は、ふつうのえさで20%、歯の粉入りのえさで33%でした。ウサギは、すり減った歯のミネラルをうまく再利用できるようです。

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どこにいる? 日本のウサギ
ウサギ科のなかまは、もともと南極大陸とオーストラリア大陸をのぞくすべての大陸にすんでいました。砂漠やツンドラから、森、山、湿地まで、いろいろな環境にすんでいます。アナウサギは人に運ばれてオーストラリアやたくさんの島に持ちこまれ、今では南極大陸をのぞくすべての大陸で見られます。
ペットのウサギのもとになったアナウサギは、もともとイベリア半島(スペインとポルトガル)とフランス南西部にすむウサギです。それが人の手で、世界の何百もの場所に広がりました。
日本には、次のようなウサギ目のなかまがすんでいます。
- ニホンノウサギ:本州・四国・九州とそのまわりの島にすむ、日本だけにいる固有種です。体長45〜54cm、体重1.3〜2.5kgほど。低い山から山地の草原や森にすみ、群れはつくらず、おもに夜に活動します。雪の多い地域のものは、冬になると耳の先の黒い部分をのぞいて、白い毛に生えかわります。
- エゾユキウサギ:北海道にすむ、ユキウサギの亜種です。日本のウサギのなかまでは最大とされます。ユキウサギは北極圏や山岳地帯にすむノウサギのなかまで、冬にはほとんどが白い毛になります。
- アマミノクロウサギ:奄美大島と徳之島だけにすむ、黒っぽいウサギです(くわしくは下で)。
- エゾナキウサギ:北海道の大雪山や日高山脈などの、おもに標高800m以上の岩場にすむナキウサギのなかまです(ウサギ科ではなく、ナキウサギ科)。
- アナウサギ(外来種):飼われていたものが野に放されて増えた島があります。広島県の大久野島が有名です。石川県輪島市の沖にある七ツ島では、1980年代に持ちこまれた4匹が増えて植物や海鳥(オオミズナギドリ)の巣穴をあらしたため駆除が進められ、2019年に根絶が発表されました。

アマミノクロウサギ(「生きた化石」とも呼ばれるウサギ)
アマミノクロウサギは、奄美大島と徳之島だけにすむウサギです。かつてアジア大陸にいた古いウサギの生き残りと考えられ、「生きた化石」と呼ばれることもあります。体長は41.8〜51cmほど。耳は4.1〜4.5cmと短く、後ろ足も短く、穴を掘るのに向いた大きな爪をもっています。毛は黒や暗い茶色です。
夜に活動し、昼は斜面に掘った巣穴や岩のすきまなどで休みます。ススキなどの草や木の芽、樹皮、スダジイの実(どんぐり)などを食べます。ナキウサギに似た声で鳴くことが知られていて、後ろ足で地面をたたくこともあり、なかまと合図をしていると考えられています。
子育てはゆっくりです。子どもは春と秋の年2回、1回に1〜2頭を産むとされています。母親は巣穴の入り口を土などでふさいで子どもをかくし、夜に入り口を開けて乳をあたえます。2025年に発表された研究では、アマミノクロウサギの足の骨を薄く切って調べました。すると、2歳ごろまでは速く育ち、その後もゆっくり育ちつづけて、成長が止まるのは5歳ごろだとわかりました。本土のニホンノウサギは1年以内におとなになるので、とてもゆっくりです。天敵が少なく食べものもかぎられた島の環境に合わせた育ち方と考えられています。足の骨は太くて密で、急な斜面の多いすみかに向いているようです。
アマミノクロウサギは、森林の伐採や道路の建設、交通事故、人が持ちこんだマングースや野犬・野ネコに食べられることで数を減らしました。環境省レッドリストで絶滅危惧IB類とされ、1963年には国の特別天然記念物になりました。2000年からマングースの駆除が進められ、2021年の推定では、奄美大島に1万24〜3万4427匹、徳之島に1525〜4735匹がいて、数は回復しつつあると考えられています。

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「ウサギの島」大久野島
瀬戸内海にある広島県竹原市の大久野島は、「ウサギの島」として知られます。島のウサギはすべてアナウサギで、2025年の時点で約500羽がすんでいます。1971年に、地元の小学校で飼われていた8羽が放されて増えたという説が有力です。戦争中、島には毒ガスの工場があり、実験用のウサギも飼われていましたが、それらは戦後にすべて処分されていて、今のウサギはその子孫ではありません。
島では観光客がたくさんのえさをあたえています。2026年には、島のイノシシが生きたウサギをおそって食べたことが論文で報告されました。島にウサギがとても多いことや、ウサギのえさの残りやウサギの死がいをイノシシが食べていることが、背景にあると考えられています。

何を食べる? 自分のふんを食べるわけ
ウサギは草食で、おもに草を食べます。ほかにも、木の葉や芽、樹皮、果実、種などを食べます。ウサギ科のなかまはほとんどが草食ですが、ノウサギのなかまには死がいを食べることがある種もいます。北アメリカのカンジキウサギでは、冬に肉をあさることが報告されています。
草にふくまれる繊維(セルロース)は、消化しにくいものです。そこでウサギは、長い「盲腸」の中で繊維を発酵させ、その中身をやわらかいふん(盲腸便)として出して、もう一度食べます。盲腸便の栄養は小腸で吸収されます。こうして、一度では取り出しきれなかった栄養をむだなく使うのです。盲腸便は、ふつう巣穴で休んでいる間に食べます。消化しにくい粗い繊維などは、ふつうのかたいふんとして出されます。
ウサギは、食べたものをはくことができません。そのため、繊維の少ない食べものなどで腸の中に物がたまると、腸がつまってしまうことがあります。
ウサギといえばニンジンを思いうかべる人が多いでしょう。けれども、野生のウサギがほかの植物よりニンジンを好むわけではありません。このイメージは、アニメのキャラクター「バッグス・バニー」の人気で広まったとされています。ニンジンは糖分が多く、食べすぎると健康によくありません。
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逃げる達人(速さ・警戒・巣穴)
ウサギは、多くの動物にねらわれる「えもの」の動物です。たとえば地中海沿岸のヨーロッパでは、アカギツネ、アナグマ、スペインオオヤマネコのおもなえものになっています。日本のニホンノウサギも、キツネ、イタチ、テンなどの肉食の動物や、イヌワシ、クマタカなどの猛禽類にねらわれます。
ウサギは、まわりをいつも警戒しています。あやしいものに気づくと、まず動きを止めてようすを見て、それから後ろ足で地面を強くたたき、巣穴のなかまに危険を知らせます(スタンピング)。目を開けたまま眠ることも多く、急な動きがあればすぐに目を覚まして、危険にそなえます。飼育されているウサギの睡眠時間は、2011年の計算で1日平均8.4時間でした。
逃げ方は、ノウサギとアナウサギでちがいます。ノウサギのなかまは、短い距離なら最高で時速80kmで走ります。ヤブノウサギ(ヨーロッパノウサギ)は長い距離でも時速55kmほどで走れ、北アメリカのジャックウサギは、ひと跳びで最大3m跳ぶこともあります。体の小さいアナウサギはそこまで速くなく(時速35kmほどといわれます)、近くの巣穴や草むらに逃げこみます。
巣穴と、ふんの「トイレ」
アナウサギは、おもに斜面や土手に巣穴を掘り、たくさんの穴がつながった「ウォーレン」でくらします。ウォーレンには、おとなのオス1〜5匹とメス1〜8匹ほどの群れがすみ、ほかの群れからなわばりを守ります。巣穴の入り口の直径は10〜50cmほどで、敵に追われたときの非常口として、内側から掘った縦穴があるウォーレンもあります。
アナウサギのなわばりには、ふんを積みあげた「トイレ」があり、なわばりの目印になっています。また、あごの下にあるにおいの腺を物にこすりつけて、自分のにおいをつけます。アマミノクロウサギも、沢のまわりの石の上や林道など、決まった場所にふんをします。
ウサギはふだんあまり鳴きません。けれども、敵につかまったときなど、ひどく追いつめられると、かん高い悲鳴をあげます。春にはオスがほかのウサギに近づくときにうなるような声を出し、怒ったときには低くうなります。ストレスを感じたときに歯ぎしりをすることもありますが、それがなかまへの合図になっているのかは、よくわかっていません。

冬のくらし(冬眠する?)
雪の多い地域にすむノウサギのなかまには、冬になると白い毛に生えかわり、雪の中で目立たなくなるものがいます。北アメリカのカンジキウサギは冬眠せず、1年中活動します。冬は、木の小枝や細い枝などを食べてすごします。ただし、雪が少なくなった地域では、冬も茶色のままのカンジキウサギが多くなっています。雪のない場所で白い毛のままだと、敵にねらわれやすくなるためです。

北極で388kmを旅したホッキョクウサギ
カナダの北極圏、エルズミア島のアラートで、25匹のホッキョクウサギに人工衛星で位置がわかる発信器をつけて追跡した研究があります。すると秋に、21匹が南西のヘーゼン湖の方へ、長い距離を移動しました。発信器の位置から計算した移動の道のりは、少なく見つもっても平均198km(113〜388km)で、いちばん長く移動したメスは、49日間で少なくとも388kmを進みました。ウサギ目のなかまで、このような季節ごとの大移動が報告されたのは初めてです(2022年に発表)。

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増え方と寿命(繁殖力のひみつ)
ウサギは、交尾がきっかけで排卵が起きる「交尾排卵」の動物です。繁殖する時期は種や地域によってちがい、条件がよければ1年中繁殖するものもいます。アナウサギのメスは早ければ生後3か月で妊娠でき、妊娠期間は30日ほど。1回に3〜7匹ほどの子どもを産み、1年に4〜5回出産します。出産した直後に、また交尾することも珍しくありません。
アナウサギの生まれたばかりの子どもは体重30〜35gほどで、目も耳も閉じていて、毛もほとんどありません。母親は1晩に1回、数分だけ乳をあたえ、終わると巣穴の入り口を土や草でふさぎます。子どもは生後11日で目が開き、18日ごろには巣穴から出はじめます。
ただし、おなかの中で胎子が死んで、母親の体に吸収されてしまうこともあります。その割合は、まわりの環境や母親の状態によってちがいます。
ノウサギのなかまは、もっとゆっくりです。ニホンノウサギの妊娠期間は42〜47日で、1回に1〜4頭(おもに2頭)を、年に3〜5回に分けて産みます。子どもは1週間ほどで自分で植物を食べはじめ、1か月ほどで独り立ちします。
寿命は何年?
野生のウサギの寿命は短く、北アメリカのワタオウサギのなかま(eastern cottontail)では、平均1〜5年ほどです。ニホンノウサギも寿命は4年未満、野生では1〜2年とされます。
飼育されたウサギは、もっと長く生きます。種によって4〜13年の記録があり、ペットのウサギ(カイウサギ)は、よい環境の室内飼いで8〜12年生きるといわれます。記録に残るいちばんの長生きは、オーストラリアのタスマニア島で飼われていたカイウサギで、18歳で死にました。飼育下のアマミノクロウサギの寿命は、約15年とされます。
人とのかかわり(家畜化・外来種・数え方)
ペットのウサギは、いつから?
人とウサギのつきあいは古く、イベリア半島では旧石器時代からアナウサギが狩られていました。古代ローマでは、遅くとも紀元前1世紀には、囲いの中でウサギを飼って食べていたことが記録されています。
よく「600年ごろにフランスの修道士がウサギを家畜にした」と言われますが、2018年に発表された研究は、歴史の記録、考古学、遺伝子の調べ方を組み合わせて、これは誤解だと示しました。家畜化は、ローマ時代(またはそれより前)から1500年代ごろまで、長い時間をかけて少しずつ進んだと考えられています。ペットとして飼われることが広まったのは、19世紀のイギリス(ビクトリア朝)のころからです。
2014年に発表された研究では、カイウサギと野生のアナウサギのゲノム(全遺伝情報)を比べ、家畜化は1つの遺伝子の大きな変化ではなく、たくさんの遺伝子で、もともとあった型の割合が少しずつ変わることで起きたことを示しました。その多くは、脳の発達にかかわる可能性のある変化でした。2018年の研究では、MRIで脳を調べ、カイウサギの脳のつくりが、恐怖を感じとったり処理したりする働きが弱まったと考えられる形に変わっていることが示されました。家畜には、おとなしく人をこわがらないという共通の特徴があります。
今では、世界に何百もの品種があります。小型のネザーランド・ドワーフ、耳が垂れたロップイヤーのなかま、黒やチョコレート色などとオレンジ(または白)の2色に分かれた毛色の「ハーレクイン」、ベルベットのような毛のレッキス、長い毛を利用するアンゴラなどです。日本でも、秋田県で改良された、体重6〜10kgにもなる大型の秋田改良種(ジャンボうさぎ)がいます。

日本では、縄文時代の貝塚からウサギの骨が見つかっていて、ノウサギは古くから狩られ、食べられてきました。ペットのウサギ(アナウサギを改良したもの)が日本に入ってきた時期や経緯は、はっきりしていません。明治時代のはじめには、ウサギを飼うことが大流行して値段がはね上がり、1873年には東京府が、ウサギ1羽につき1円の税金をかけるほどでした。
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オーストラリアに広がったウサギと、ウサギの病気
オーストラリアには、もともとウサギはいませんでした。1788年に初めて持ちこまれましたが、大きく増えたのは19世紀になってからです。1859年に、ビクトリア州の地主トーマス・オースティンが、狩りなどを楽しむために24匹のアナウサギを放すと、その子孫が広がって農業に大きな被害を出し、ミミナガバンディクート(ビルビー)などの在来の動物が減る原因にもなりました。1901〜1907年には、ウサギが西へ広がるのを止めるための長い「ウサギよけフェンス」がつくられましたが、ウサギは高く跳び、地下に穴も掘るので、止められませんでした。
1950年には、南アメリカのウサギ(タペティ)がもつ「粘液腫(ねんえきしゅ)ウイルス」が、ウサギを減らすためにオーストラリアで放されました。このウイルスが起こす粘液腫症(ミクソマトーシス)は、はじめはかかったウサギの99.8%近くが死ぬほど強いものでした。ウイルスを運ぶのは、蚊やウサギノミなどの血を吸う虫です。しかしその後、ウイルスは弱いものに置きかわり、ウサギの側もウイルスに強くなっていきました。2019年に発表された研究では、イギリス、フランス、オーストラリアのウサギで、同じような抵抗力の遺伝子の変化が、それぞれ別々に起きていたことがわかりました。1995年には、別のウイルスによる「ウサギ出血病」もオーストラリアに広がり、何百万匹ものウサギが死にました。
ウサギには、ノミやダニなどの寄生虫もつきます。また北アメリカのワタオウサギなどでは、「ショープ乳頭腫ウイルス」に感染すると、頭のまわりなどに角のようなできものができることがあります(一部はがんになります)。1930年代にアメリカのアイオワ州の猟師たちが、角のあるウサギをしとめたと報告したのがきっかけで、1933年にこのウイルスが見つかり、名前がつけられました。角のあるウサギ「ジャッカロープ」の伝説は、このウイルスがもとになったのかもしれないと考えられています。
なぜ「1羽、2羽」と数えるの?
日本語では、ウサギを鳥と同じ「羽(わ)」で数えることがあります。その由来には、いくつもの説があります。獣の肉を食べることが禁じられていた時代に、二本足で立つ姿を鳥に見立てて食べたという説、「鵜(う)」と「鷺(さぎ)」だから鳥だとこじつけたという説、とったウサギの耳をたばねて「一把(いちわ)」と数えたからという説、網に追いこむ狩りのしかたが鳥の狩りと同じだったからという説などです。今は「匹」で数えることも多く、NHKは、生きたウサギは「匹」で数えるのがふさわしいとしています。
月のウサギと、昔話のウサギ
日本では古くから、月の模様が、もちをつくウサギの姿に見えるといわれてきました。『古事記』の「因幡の白兎(いなばのしろうさぎ)」や「かちかち山」など、ウサギが出てくる昔話もたくさんあります。十二支の「卯(う)」もウサギです。
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よくある疑問
- ウサギは何類? 何目・何科?
- ウサギは哺乳類で、ウサギ目(兎形目)のウサギ科に入ります。昔はネズミと同じ齧歯目に入れられていましたが、上の前歯が2対あることなどがちがい、1912年にウサギ目として分けられました。同じウサギ目には、ナキウサギ科のなかまもいます。
- ウサギの寿命は? 何歳まで生きる?
- 野生では短く、ニホンノウサギは野生で1〜2年とされます。飼育されたウサギは種によって4〜13年の記録があり、ペットのウサギはよい環境の室内飼いで8〜12年生きるといわれます。記録に残るいちばんの長生きは18歳です。
- ウサギは何を食べる?
- 草食で、草のほか、木の葉や芽、樹皮、果実、種などを食べます。盲腸で発酵させてできたやわらかいふん(盲腸便)をもう一度食べて、栄養をむだなく吸収します。ニンジンが大好物というイメージはアニメから広まったもので、野生のウサギがとくに好むわけではありません。
- ウサギはなぜ「1羽、2羽」と数えるの?
- 由来にはいくつもの説があります。獣の肉を食べることが禁じられていた時代に鳥に見立てて食べたという説、とったウサギの耳をたばねて「一把(いちわ)」と数えたという説、鳥と同じように網に追いこんでとったからという説などです。今は「匹」で数えることも多いです。
- ウサギの耳はなぜ長いの?
- 敵が近づく音を聞くためと、体の熱を逃がすためです。耳には血管がたくさん通っていて、汗腺がほとんどないウサギは、耳を流れる血の量を変えて体温を調節します。暑い地域にすむウサギやノウサギほど、耳が大きい傾向があります。
- ウサギは鳴かないの?
- ふだんはあまり鳴きませんが、敵につかまったときなどには、かん高い悲鳴をあげます。うなるような声を出すこともあります。危険を知らせるときは、声のかわりに後ろ足で地面を強くたたきます(スタンピング)。アマミノクロウサギは、ナキウサギに似た声で鳴きます。
- ウサギはどこにすんでいる? どこの国の動物?
- ウサギ科のなかまは、もともと南極大陸とオーストラリア大陸をのぞくすべての大陸にすんでいて、今は人が持ちこんだものもふくめて世界中にいます。ペットのウサギのもとのアナウサギは、イベリア半島(スペインとポルトガル)とフランス南西部のウサギです。日本にはニホンノウサギ、エゾユキウサギ、アマミノクロウサギなどがすんでいます。
- ウサギの種類は? ノウサギとアナウサギのちがいは?
- ウサギ科は70種あまりで、そのうち32種がノウサギ属です。ノウサギはふつう体が大きめで巣穴を掘らず、子どもは毛が生えて目も開いた状態で生まれます。アナウサギは巣穴でくらし、子どもは毛がなく目を閉じた状態で生まれます。ペットのウサギはアナウサギを家畜にしたもので、何百もの品種があります。
ナゾロジーで読む13本
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- 01 「うさぎの島」でイノシシが生きたウサギを食べていた
- 02 ナポレオンが「ウサギの大群」に襲撃され、敗北した事件
- 03 タタリ神化? 顔が「黒い触手」で覆われたウサギを発見【画像あり】
- 04 島暮らしのウサギは大人になるのに「5倍の時間がかかる」と判明!
- 05 ウサギは「自分の歯」を食べてカルシウムを摂取していた!
- 06 「ウサギ一羽に1千万円!?」明治時代に起きた謎のウサギバブルについて
- 07 ホッキョクウサギの行動範囲は恐ろしく広いことが判明! 49日間で388kmも移動していた!
- 08 もっと大きなウサギがいない理由を解明 他の草食動物が進化を抑圧していた?(京都大学)
- 09 ウサギはうんちを食べ、クマノミは性別を変える!?あなたの知らない「トンデモ習性」を持つ動物10選
- 10 1500年前の「ウサギ」彫刻の古代ローマ指輪を発見
- 11 「人工赤血球」で大量出血したウサギの救命に成功!
- 12 植物にウサギのDNAを混ぜたら「生きる空気清浄機」になった
- 13 「ウサギとカメ」の童話は本当だった。 実は生涯でみるとカメのほうが足が速いという研究結果
近いなかまの図鑑
同じ哺乳類
参考文献
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- Wikipedia「ウサギ」(日本語版)
- Wikipedia「兎形目」(日本語版)
- Wikipedia「アナウサギ」(日本語版)
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- Wikipedia「ニホンノウサギ」(日本語版)
- Wikipedia「ユキウサギ」(日本語版)
- Wikipedia「アマミノクロウサギ」(日本語版)
- Wikipedia「エゾナキウサギ」(日本語版)
- Wikipedia「大久野島」(日本語版)
- Wikipedia「Rabbit」(英語版)
- Wikipedia「Hare」(英語版)
- Wikipedia「Leporidae」(英語版)
- Wikipedia「European rabbit」(英語版)
- Wikipedia「Domestic rabbit」(英語版)
- Wikipedia「Amami rabbit」(英語版)
- Wikipedia「Snowshoe hare」(英語版)
- Wikipedia「Arctic hare」(英語版)
- Wikipedia「Harlequin rabbit」(英語版)
- Wikipedia「Myxomatosis」(英語版)
- Wikipedia「Shope papilloma virus」(英語版)
- Wikidata「ウサギ科 Leporidae」(Q25900)
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表紙の写真: Charles J. Sharp(CC BY-SA 4.0) / Wikimedia Commons
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この図鑑は、参考文献の資料をもとに、ナゾロジー編集部がまとめています。












