道具を使い、文化をもつ。
ヒトにいちばん近いなかま。
- ナゾロジーの記事
- 40本
- 体重(オス)
- 40〜60kg
- 飼育下で生きた記録
- 60年以上
チンパンジーは、アフリカの森やサバンナにすむヒト科の類人猿。ボノボとともに、ヒトにいちばん近い生き物です。木の枝や石を道具に使い、群れごとにちがう「文化」をもちます。野生の数は減っていて、絶滅が心配されています。
図鑑データ
- 分類
- 哺乳類 › 霊長目 › ヒト科 › チンパンジー属
- 学名
- Pan troglodytes
- 英名
- chimpanzee(チンパンジー)、chimp(チンプ)
- なかま
- ニシ・ナイジェリア・チュウオウ・ヒガシの4亜種。同じ属にボノボ
- 大きさ
- 頭からおしりまでオス85cm・メス77.5cmほど。立った高さは平均150cmほど
- 体重
- オス40〜60kg、メス32〜47kgほど
- すみか
- アフリカの赤道に近い地域(熱帯雨林、山地の森、サバンナなど)
- 日本では
- 野生にはいない。動物園で見られる(特定動物)
- 食べもの
- 雑食(おもに果実。葉、種、花、ハチミツ、昆虫、サルなどの肉も)
- 群れ
- オスとメスが何頭もいる19〜106頭ほどの群れ。小さなグループに分かれたり集まったりする
- 寿命
- 野生では平均13〜33年ほど(群れによる)。飼育下で60年以上の記録
- 保全状況
- 絶滅危惧種(IUCN)。亜種のニシチンパンジーは、さらに危険度の高い「深刻な危機」
チンパンジーとは(サルとのちがい)
チンパンジー(学名 Pan troglodytes)は、霊長目ヒト科チンパンジー属の哺乳類です。アフリカの赤道に近い地域の、森やサバンナにすんでいます。体は黒くてかたい毛におおわれていますが、顔や耳、手のひら、足の裏には毛がありません。

「サル」と呼ばれることもありますが、チンパンジーは「類人猿(るいじんえん)」というグループの一員です。多くのサルにはしっぽがありますが、類人猿にはしっぽがありません。チンパンジー、ボノボ、ゴリラ、オランウータンは「大型類人猿」と呼ばれ、分類の上ではヒトと同じヒト科に入ります。
いちばん近いなかまは、同じチンパンジー属のボノボです。2つの種はコンゴ川をはさんで分かれてすんでいて、北側がチンパンジー、南側がボノボです。チンパンジーのほうが体が大きく、がっしりしています。

この2種は、今生きている動物の中で、ヒトにいちばん近い生き物でもあります。DNA(性染色体をのぞく)を1文字ずつ並べて比べられる部分では、ヒトとのちがいは1.5〜1.6%しかありません。ただし、類人猿のゲノムを比べた2025年の研究では、単純に1対1では並べて比べられない部分も、ゲノムの1割以上あることが分かりました。これには、配列をうまく並べられないという技術上の限界もふくまれます。
ナゾロジーでくわしくヒトとチンパンジーのDNAは実は15%も違うと判明:なぜ1%と言われ続けたのか?
大きさと体のつくり
頭からおしりまでの長さは、オスで85cm、メスで77.5cmほど。立ち上がったときの高さは、平均で150cmほどです。体重はオスで40〜60kg、メスで32〜47kgほどです。

- 腕と手:腕は脚よりも長く、手は細長くて指が長く、親指は短めです。爪は平たい形をしています。
- 足:足の親指がほかの指と向かい合っているので、足でも枝をつかめます。
- 毛と顔:毛はふつう黒で、あごの毛は白くなります。年をとると、額などの毛がうすくなり、白や灰色の毛がまじります。
- 脳:脳の大きさは397mL前後で、ヒトの3分の1ほどです。
木の上では、幹をよじ登ったり、腕でぶら下がって移動したりします。地上では、軽くにぎった手の指の背を地面につけて、四つ足で歩きます。この歩き方を「ナックルウォーク」といいます。二本足で立って歩くこともできます。

力はどのくらい強い?
チンパンジーには人をはるかにこえる怪力がある、という話が、1920年代から伝えられてきました。けれども、2017年の研究で筋肉を調べて計算したところ、出せる力とパワーは、同じ大きさの人の筋肉の約1.35倍でした。チンパンジーの筋肉は、すばやく大きな力を出す「速筋(そっきん)」が約67%をしめていて、木に登ったり枝にぶら下がったりするくらしに合っていると考えられています。
どこにいる?(すみかと4つの亜種)
チンパンジーがすむのは、西はセネガルから東はタンザニアまでの、アフリカの赤道に近い地域です。熱帯雨林のほか、山地の森、サバンナ、乾いた林などにもくらしています。日本をふくめ、アフリカのほかに野生のチンパンジーはいません。
すむ地域によって、ニシチンパンジー、ナイジェリアチンパンジー、チュウオウチンパンジー、ヒガシチンパンジーの4つの亜種(あしゅ)に分けられています。亜種とは、同じ種の中で、地域ごとに少しずつ特徴がちがう集団のことです。
画像はイメージですチンパンジーは昼に活動し、夜は木の上に寝床(ベッド)をつくって眠ります。ベッドは、ふつう毎晩新しくつくります。

2026年に発表された研究によると、ヒガシチンパンジーは、すずしいときやしめったときほど厚くて深いベッドをつくり、雨の夜の前には、葉がよくしげった高い木を選んでいました。ただし、天気を「予想」しているのかどうかは、まだはっきりしていません。
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何を食べる?
チンパンジーは雑食ですが、いちばんよく食べるのは果実です。ほかに、葉、種、花、木の皮、ハチミツ、昆虫なども食べます。

肉も食べます。何頭もが集まって、木の上にすむサルを狩ることがあるのです。いちばんよくねらわれるのは、アカコロブスというサルです。コートジボワールのタイの森では、獲物を追い立てる役、逃げ道をふさぐ役、待ちぶせする役などに分かれて狩りをします。しとめた獲物の肉は、なかまと分け合います。
熟して自然に発酵した果実には、アルコールがふくまれることがあります。ギニアビサウでは、野生のチンパンジーが、アルコールをふくむアフリカパンノキの実をなかまと分け合って食べるようすが、2025年にはじめて報告されました。
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道具を使う・数字を覚える(チンパンジーの知能)
チンパンジーは、記号を覚える、なかまと協力する、道具を使うなど、知能の高さをしめす行動をたくさん見せます。鏡にうつった姿を自分だと分かる動物のひとつでもあります。
道具と、チンパンジーの「文化」
1960年、ジェーン・グドールさんが長期の調査を始めたタンザニアのゴンベで、チンパンジーが小枝を加工して道具にし、アリ塚からシロアリを取り出すことが報告されました。野生のチンパンジーが、道具を自分で加工して使うことをしめした報告です。今では、ほとんどすべての地域のチンパンジーが、道具を使うことが分かっています。
- シロアリ釣り・アリ釣り:棒を巣に差しこんで、シロアリやアリをとって食べます。
- ナッツ割り:西アフリカのチンパンジーは、かたい木の実を石や枝でたたいて割ります。
- やりのような棒:セネガルでは、歯でとがらせた棒を木の穴に突き入れて、中にいるショウガラゴ(小さな霊長類)をとるようすが観察されています。
画像はイメージですこうした道具や行動は、地域や群れによってちがいます。なかまのやり方を見て学ぶことで群れに広まり、次の世代へ受けつがれていくため、チンパンジーの「文化」と考えられています。
2022年には、野生のチンパンジーが自分やなかまの傷口に虫を当てるようすが、はじめて報告されました。2025年には、ウガンダの群れでも、6頭が飛ぶ虫を傷に当てていたと報告されています。薬のようなはたらきがあるのかどうかは、まだ分かっていません。
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数字と記憶、ことば
日本では、京都大学の霊長類研究所(愛知県犬山市)で、1978年から、メスの「アイ」たちに文字や数を教えて心のはたらきを調べる研究が続けられてきました。アイは、アラビア数字で数を表すことを学んだ最初のチンパンジーとされ、2026年1月に49歳で亡くなりました。
ナゾロジーでくわしくローマ字や漢字が読めた天才チンパンジー「アイ」、49歳で亡くなる
アイの息子の「アユム」は、画面に一瞬だけ出る1〜9の数字の場所を覚え、小さい順に指さすテストで、人のおとなよりよい成績を出しました。ただし、アユムはこの課題をたくさん練習していた、という指摘もあります。
人のことばを教える試みもあります。1960年代からアメリカで手話を教わった「ワショー」は、350をこえるサインを覚えたと報告されました。ただし、教える人のまねをしているだけではないかという指摘もあり、今も議論が続いています。
なかまのことも長く覚えています。むかし同じ群れにいた相手の写真と、知らない相手の写真を並べて見せると、むかしのなかまのほうを長く見つめました。チンパンジーとボノボを調べた2023年の研究で、ボノボでは、26年以上会っていなかった相手を覚えている可能性も示されました。
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群れのくらしと争い(なぜ凶暴といわれる?)
チンパンジーは、オスとメスが何頭もいる群れでくらします。群れの大きさは19〜106頭ほどで、200頭をこえる群れも知られています。ただし、ふだんは数頭ずつの小さなグループに分かれて動き、集まったり分かれたりをくり返します。
オスは生まれた群れにとどまり、メスは大きくなると、よその群れへ移ることが多いです。オスの間にははっきりした順位があり、オスどうしで手を組んで、順位を守ったり上げたりします。こうした関係をつくり、保つのに大切なのが、毛づくろいです。

くすぐり合ったり、追いかけっこをしたりするときには、笑い声も出します。ただし、歯を見せて笑っているように見える顔は、こわがっているときの表情です。
なぜ「凶暴」といわれるの?
群れどうしの関係は、きびしいものです。おとなのオスたちは集団でなわばりの境を見回り、となりの群れのチンパンジーをおそって、殺してしまうことがあります。食べものなどの資源やメスをめぐる争いだと考えられています。
タンザニアのゴンベでは、1つの群れが2つに分かれたあと、1974年から約4年にわたって争いが続き、片方の群れのオスは、殺されたり行方が分からなくなったりして、すべていなくなりました。2026年には、知られている中で最大の野生の群れが2つに分かれ、その後の7年間に、片方の群れがもう片方を24回おそって、おとなのオス少なくとも7頭と赤ちゃん17頭を殺したことが報告されています。
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とはいえ、群れの中のもめごとは、たいてい暴力にならずにおさまります。緊張をほぐすために、相手の体にキスをすることもあります。
人にとっても、おとなのチンパンジーは危険な動物です。力が強く、攻撃的で、行動が読めないため、ペットには向きません。日本では「特定動物」に指定されています。
寿命と子育て
チンパンジーには決まった繁殖の季節がありません。オスもメスも複数の相手と交尾するので、生まれた子の父親がだれなのかは、はっきりしません。妊娠の期間は約8か月です。
生まれたばかりの赤ちゃんは、時間の約80%を母親の体にくっついてすごします。生後5〜7か月になると、母親の背中に乗るようになります。乳ばなれは3〜5歳ごろ。そのあとも母親とのきずなは続き、メスは15歳ごろ、オスはその1年ほどあとに、おとなになります。

寿命は、すむ場所によって大きくちがいます。野生での平均寿命は、タンザニアのゴンベで18年、条件のよいウガンダのンゴゴの群れでは33年近くと見積もられています。飼育されているチンパンジーでは、60年をこえて生きた記録があります。日本では、神戸市立王子動物園の「ジョニー」が、推定69歳まで生きました。
名前の由来と人とのかかわり
「チンパンジー」という名前は、アフリカのコンゴ地方のことばから来ています。学名の troglodytes は、「ほら穴にすむ人」を意味するギリシャ語に由来します。
ヒトに近いチンパンジーは、科学の研究にも使われてきました。1961年1月には、アメリカの「ハム」がロケットで宇宙へ行き、無事に帰ってきました。宇宙へ行った最初の類人猿です。ワクチンの開発にも使われましたが、20世紀の終わりごろからは、チンパンジーを使う実験はなるべく避けるべきだという考えが強まっています。

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日本には、1921年にイタリアのサーカス団とともに来たのが、はじめての記録とされています。1927年には、大阪市の天王寺動物園で飼育が始まりました。
野生のチンパンジーは、数を減らしています。おもな原因は、森が切り開かれてすみかが失われること、密猟、そして病気です。国際自然保護連合(IUCN)のレッドリストでは「絶滅危惧種」とされ、ワシントン条約によって、野生のチンパンジーの商業目的の国際取引は禁止されています。
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よくある疑問
- チンパンジーとサルのちがいは?
- チンパンジーは、霊長類の中でもヒトに近い「類人猿」のなかまで、分類ではヒトと同じヒト科に入ります。多くのサルにはしっぽがありますが、チンパンジーなどの類人猿にはしっぽがありません。
- チンパンジーとボノボのちがいは?
- どちらもチンパンジー属ですが、別の種です。チンパンジーはコンゴ川の北側、ボノボは南側にすんでいます。チンパンジーのほうが体が大きくがっしりしていて、ボノボは手足が長めで、くちびるがピンク色、頭の毛が左右に分かれています。
- チンパンジーの寿命はどのくらい?
- 野生での平均寿命は、群れによって13〜33年ほどと大きな幅があります。飼育されているチンパンジーでは60年をこえた記録があり、日本では神戸市立王子動物園の「ジョニー」が推定69歳まで生きました。
- チンパンジーはどのくらい力が強い?
- 2017年の研究によると、チンパンジーの筋肉が出せる力とパワーは、同じ大きさの人の筋肉の約1.35倍です。すばやく大きな力を出す「速筋」が筋肉の約67%をしめているためで、「人の何倍もの怪力」というほど大きな差ではないとされています。
- チンパンジーの知能は人間の何歳くらい?
- 知能の全体を人間の年齢に置きかえることはできませんが、訓練でじゃんけんの勝ち負けの関係を学んだチンパンジーの成績は、人間の4歳児と同じくらいだったと報告されています。ただし、得意なことは人とちがいます。画面に一瞬だけ出る数字の場所を覚えるテストでは、チンパンジーのアユムが人のおとなよりよい成績を出しました。
- チンパンジーはなぜ凶暴といわれるの?
- おとなのオスたちが集団でとなりの群れのチンパンジーをおそい、殺してしまうことがあるためです。食べものなどの資源やメスをめぐる争いだと考えられています。ただし、群れの中のもめごとは、たいてい暴力にならずにおさまります。力が強く行動が読めないので、人が飼うのは危険です。
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- 01 チンパンジーが「アルコール食で宴会」する様子の世界初の目撃報告
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- 40 カラスは生後4ヶ月で、大人のチンパンジーの知能レベルに達することが判明(ドイツ)
参考文献
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- Yoo D ほか (2025) Complete sequencing of ape genomes. Nature
- Al-Razi H ほか (2026) Thermal adaptation and the potential anticipation of overnight weather in the nesting decisions of chimpanzees. Current Biology
- Bowland AC ほか (2025) Wild chimpanzees share fermented fruits. Current Biology
- Mascaro A ほか (2022) Application of insects to wounds of self and others by chimpanzees in the wild. Current Biology
- Kolff K ほか (2025) Insect applications to open wounds by chimpanzees in the wild: first insights from East African chimpanzees. Scientific Reports
- Inoue S, Matsuzawa T (2007) Working memory of numerals in chimpanzees. Current Biology
- Lewis LS ほか (2023) Bonobos and chimpanzees remember familiar conspecifics for decades. Proceedings of the National Academy of Sciences
- Sandel AA ほか (2026) Lethal conflict after group fission in wild chimpanzees. Science
- Gao J ほか (2018) Learning the rules of the rock–paper–scissors game: chimpanzees versus children. Primates
- Kühl HS ほか (2017) The Critically Endangered western chimpanzee declines by 80%. American Journal of Primatology
- Wikipedia「チンパンジー」(日本語版)
- Wikipedia「Chimpanzee」(英語版)
- Wikipedia「類人猿」(日本語版)
- Wikipedia「Ape」(英語版)
- Wikipedia「Bonobo」(英語版)
- Wikipedia「アイ (チンパンジー)」(日本語版)
- Wikipedia「Ai (chimpanzee)」(英語版)
- Wikipedia「アユム (チンパンジー)」(日本語版)
- Wikipedia「Ayumu (chimpanzee)」(英語版)
- Wikipedia「Gombe Chimpanzee War」(英語版)
- Wikipedia「Taï National Park」(英語版)
- Wikidata「Pan troglodytes」(Q4126704)
表紙の写真: Giles Laurent(CC BY-SA 4.0) / Wikimedia Commons
ほかの写真のクレジットは、それぞれの写真のページにあります。
この図鑑は、参考文献の資料をもとに、ナゾロジー編集部がまとめています。












