長期にわたる協力関係を築いていた
研究チームは今回、アフリカ中部・コンゴ共和国にある「ヌアバレ・ンドキ国立公園(NNNP)」で得られた、野生のチンパンジーとゴリラの長期記録データを分析しました。
NNNPは、チンパンジーやゴリラの他に、森林ゾウやヒョウなど、多くの絶滅危惧生物の保護拠点となっています。
NNNPの南端に位置する「グアルーゴ・トライアングル(Goualougo Triangle)」では、1999年から2020年にかけて、チンパンジーとゴリラの日常生活に関する追跡調査が行われました。
本研究では、この期間に収集された発表済みのデータと未発表のデータを合わせて分析。
その結果、チンパンジーとゴリラは、天敵からの保護、採餌の協力、情報共有など、幅広い文脈で持続的な社会関係を築いていたことがわかったのです。
たとえば、チンパンジーは天敵のヒョウから身を守ってもらうために、ゴリラに助けを求めることがありました。
しかし、この「天敵からの保護」関係は、研究チームが当初予想したよりはずっと少なかったようです。
「記録の中では、チンパンジーがヒョウに殺されたり、捕食される報告が多々ありました」と、WUSTLの霊長類学者で、研究主任のクリケット・サンズ(Crickette Sanz)氏は話します。
それよりもむしろ、両者にとって重要な関係は「採餌の協力」であるようでした。
記録されたすべての社会関係のうち、実に34%を「採餌の協力」関係が占めています。
これは具体的にいうと、同じ場所で協力して食料を採取する行動です。
同じ木に登って、食べられる植物の情報交換をすることで、お互いに採餌の効率を高めていました。
今回の調査では、少なくとも20種類の植物が共同採餌の対象となっていることが新たに判明し、チンパンジーとゴリラが共有する資源の多様性について、これまでの知見を大きく広げる結果となっています。
加えて、両コミュニティが餌場で再開したとき、チンパンジーとゴリラの子どもたちは、馴染みの友だちを互いに探し出して遊び始めました。
この手の相互作用について、サンズ氏は「それぞれの子どもの社会的、身体的、および認知的能力を向上させるユニークな発達の機会を提供している可能性がある」と指摘します。
しかし、両グループの社会的交流が長期にわたって続く一方で、そこには、あるリスクを高めるデメリットもありました。