社会的交流には「命に関わるリスク」もあった
チンパンジーとゴリラは、多くの協力関係で互いに恩恵を受けている反面、相互の社会的交流にはリスクもありました。
それが「病気の感染」です。
昔から、霊長類にとっての最大の危機は、密猟や生息地の喪失と言われていますが、近年では、感染症にも同等の脅威があるとして懸念され始めています。
特に、チンパンジーとゴリラは近縁種であるため、多くの病原体が相互に伝染してしまうのです。
たとえば、非常に感染力の強いウイルスとして知られる「エボラ」は、中央アフリカに分布する霊長類に壊滅的な被害を与えています。
同地ではちょうど20年前に、エボラ出血熱が集団発生し、その影響で、世界のチンパンジーとゴリラのおよそ3分の1が激減したと推定されています。
そのため、日常的な交流を持つことは、病原菌への感染リスクを互いに高める危険性があるのです。
サンズ氏は、チンパンジーやゴリラの生態を理解するだけでなく、彼らの生息地を保護するために、長期的な研究が引き続き重要であると訴えています。
「チンパンジーとゴリラの研究は60年以上前から続いていますが、これらの魅力的な類人猿について学ぶべきことはまだたくさんあります。
現在の主な課題は、絶滅危惧種である両種を確実に保護し、将来の世代にこのような研究の機会を提供することです」