人工物を使った自慰行為は初のケース
その様子は、2018年8月、ウガンダ北西部・ホイマ県にあるブリンディの熱帯林で初めて目撃されました。
自慰行為をしていたのは、チンパンジーのコロニーに属する「アラアリ(Araali)」という名の幼いオス個体で、ポイ捨てされたプラスチックボトルにペニスを挿入し、ピストン運動を繰り返していたのです。
ブリンディ・チンパンジー・コミュニティ・プロジェクト(Bulindi Chimpanzee and Community Project)の研究員によると、アラアリはその間、霊長類の行動学で「プレイフェイス(Play face)」と呼ばれる、口を開けてリラックスした表情をしていたとのこと。
なお、アラアリがボトルの中に射精したかどうかは確認できませんでした。
こちらが実際に撮影された映像です。
茂みに隠れて見えづらいですが、白いボトルにペニスを挿入して、腰を動かす様子が確認できます。
このボトルは元々、除草剤が入っていた容器であるとのこと。
研究チームは、形としては下の図のようになっていると説明しています。
So, here’s a paper I never thought we’d write: “Use of a novel human object as a masturbatory tool by a wild male chimpanzee at Bulindi, Uganda”https://t.co/pWuxzpDE4i
With fab illustrations by coauthor @KimvanDijk04 pic.twitter.com/n8fRw5ywhm— Bulindi Chimpanzees (@BulindiChimps) September 2, 2021
チンパンジーをはじめとする野生の霊長類は、人が作ったものには無関心か恐怖心を抱く傾向がありますが、アラアリが所属するグループは、日頃から人と接触する機会も多く、人間や人工物にも慣れていたといいます。
研究チームは、アラアリの自慰行為について、次のように説明します。
「チンパンジーのオスは、性的興奮以外にも、食べ物に興奮したり、遊びなどの社会的交流の中で陰茎を勃起させることが多々あります。
アラアリの自慰行為は、新しく見つけた人工物を観察したり、遊んだりする中でから生じた可能性が高いです。
また、ボトルの物理的特性がアラアリの自己発情を誘発したと考えられ、ボトルの形状がその目的に適していることを認識していたのかもしれません」
つまり、今回の行動は、霊長類の認知機能の高さを理解する上で、非常に興味深い観察例となります。
霊長類の自慰行為は、自らの手や足を使ったり、自然物に擦りつけるのがほとんどです。
しかし中には、人間でさえ躊躇する風変わりな自慰行為もあります。
その代表がカエルを使ったものです。
これはかなり強烈な例で、霊長類の自慰行為の複雑さを垣間見せます。
研究チームは今後、飼育下と野生下で自慰行為がどう変わるかに注目し、調査を続ける予定です。