なんとなく嫌な感じがする、の正体
たまたま訪れた場所で、なぜかわからないけれど、これ以上近づかない方が良いような気がする、そんなシチュエーションはホラー作品でよく描かれます。
そして、そんな場所の近くには死体が転がっていたりします。
これはホラー演出として鉄板ですが、実は現実で同じようなシチュエーションがあった場合、生物は同じような反応をする可能性があるのです。
つまり、近くに死体があるとその事実を知らなくても、「ここ、なんだか嫌な感じがする」と回避する可能性が高いのです。
このような、まだ視覚的に死体を認識していないにも関わらず、無意識に嫌悪感を覚えてその場所を避けようとする行動には、実は科学的根拠があります。
まずそもそも死体が近くにあるとき、生物は恐怖や嫌悪を感じます。これは危険な状況を回避するために、多くの動物種に本能的に備わっている行動です。
野生下においては、他個体の死体の近くには捕食者がいたり、病死した死体が病気の感染源になる可能性があるため、むやみに死体に近づくという行為は、自分も命を落とすリスクに繋がります。
しかし見て避けるのはわかりますが、見つける前から避けようとするというのはどういう理屈なのでしょう?
ここには、死体から発せられる臭い(死臭)が関与していると考えられています。
死体からは、「プレシトシン」という独特な腐敗臭が発生しています。
プレシトシンは、生物の死後にタンパク質が分解される過程で生成される化合物で、腐敗臭や死臭の主要な原因となる物質の一つです。
プレシトシンの臭いは、死体に産卵したり、死体を食べたりする昆虫などにとっては誘引物質となり、一般的な動物にとっては、忌避反応を引き起こすとされています。
つまり、見えていなくても生物はプレシトシンを感じ取ると、その場所を避けようとするのです。
とはいえ、プレシトシンは不快な臭いの原因物質なので、こうした説明だと悪臭がするから避けるだけじゃないの? と思う人もいるかも知れません。
しかし、ここにはもう少し興味深い報告があるのです。