睡眠調査の中でたまたま発見!
研究チームは、同センターの熊本サンクチュアリ(熊本県宇城市)にて、12匹のオスのチンパンジーの睡眠状態を調べるべく、夜間調査をしていました。
各個体につき6日ずつ、赤外線ビデオカメラを用いて、のべ72日分の夜間行動を撮影。
その中で、本来の目的とは別に、8匹のチンパンジーにおいて、合計46回の夜間勃起が確認されたのです。
夜間勃起とはレム睡眠中に、男性器が性的興奮を伴わずに勃起してしまう生理現象のことです。
EDの診断などにも利用される眠っている最中に起きる無自覚な現象ですが、寝起きのタイミングで起きた場合は「朝立ち」と表現され、自覚しやすいものなので男性には馴染み深い生理現象でしょう。
性的興奮とは無関係な現象ですが、これが性的な夢と合わさると夢精に繋がると考えられています。
これまで、こうした現象が人間以外の動物でも起きるのかどうかという点についてはあまり報告がありません。
これは夜間の動物の状態を観察しづらいことが原因ですが、特別注目するほどの現象でもなかったことも一因でしょう。
今回の報告は、チンパンジーの生活行動の観察中に偶然発見されたもので、ヒト以外の霊長類で夜間勃起が生じることを確認した初めての事例です。
このため研究チームは、夜間勃起がヒトにのみ見られる現象ではなく、他の哺乳類でも広く生じている可能性がある、と述べています。
また今回の観察では、夜間勃起が確認されたうち4〜6匹のチンパンジーは、勃起後に自慰行為を誘発しており、射精らしき現象も認められています。
チンパンジーは「性」への好奇心が旺盛
チンパンジーは、ヒトに負けず劣らず、「性」に対する好奇心が旺盛です。
昨年発表された研究では、東アフリカ・ウガンダの野生下で、オスのチンパンジーがプラスチックボトルで自慰行為をする様子が確認されました。
チンパンジーのコロニーに属する「アラアリ(Araali)」という名前の幼いオスが、ポイ捨てされたプラスチックボトルに陰茎を挿入し、ピストン運動を繰り返していたのです。
こちらも、チンパンジーが自然物ではなく、人工物を「性玩具」として使った世界初の事例とされています。
今回の夜間勃起の観察は、動物実験委員会の許可を得て実施された研究であり、チンパンジーの日常行動に何らの操作も加えていません。
チンパンジーの寝室の上部に設置したビデオカメラで定点撮影をしたシンプルな研究です。
本研究成果も、映像に予期せず記録された現象を報告したにすぎないため、今後このチンパンジーの夜間勃起について、継続して観察・調査を続ける予定はないといいます。
まさに、「偶然の産物」だったようです。