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Credit: canva
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飛ぶ虫を「塗り薬」にするチンパンジーを発見

2025.10.28 17:00:02 Tuesday

チンパンジーが自分の傷に「飛ぶ虫」を押し当てていた。

そんな驚くべき行動が、東アフリカのウガンダ・キバレ国立公園での独オスナブリュック大学(Universität Osnabrück)による最新調査で観察されました。

これまでにもチンパンジーが葉っぱを傷にあてたり、傷口を舐めたりする事例は知られていましたが、「虫」をまるで塗り薬のように使う行動は極めて珍しい報告です。

しかも今回は、仲間のケガに虫を押し当てる“お手当て”行動も目撃され、専門家たちに大きな衝撃を与えています。

研究の詳細は2025年8月25日付で科学雑誌『Scientific Reports』に掲載されました。

 

Chimpanzees in Uganda use flying insects to tend their wounds, study reveals https://phys.org/news/2025-10-chimpanzees-uganda-flying-insects-tend.html
Insect applications to open wounds by chimpanzees in the wild: first insights from East African chimpanzees https://doi.org/10.1038/s41598-025-16582-5

森のなかで発見された「虫の塗り薬」行動

ウガンダのキバレ国立公園で、霊長類学者チームがチンパンジーの群れを観察していた際のことです。

森を自由に動き回るチンパンジーたちのなかで、ふと、開いた傷口を持つ個体がひときわ奇妙な行動を見せました。

その個体は森の中を飛び回る虫を器用に捕まえると、唇や指でしっかりと動きを止め、自分の傷口へと慎重に押し当てたのです。

この一連の流れは偶然ではなく、はっきりとした意図を感じさせるものでした。

しかも同じ虫を何度も傷口に繰り返し押し当てたり、いったん口に含んでから再び使うなど、明らかに「使い方」が決まっている様子でした。

周囲には、他のチンパンジーたちが興味深そうにこの行動をじっと見守る姿も見られました。

最も多かったのは、自分自身のケガをした部位に虫を塗り込むように押し当てる場面です。

実際の映像がこちら。

しかし、とくに注目されたのは、思春期の雌チンパンジーが、兄弟の傷に虫をそっとあてるという非常に稀な「お手当て」シーンでした。

この行動は、単なる自己治療の枠を超え、他者への思いやりや協力性の芽生えを感じさせるものです。

これまでの研究でも、チンパンジーが傷口に葉っぱを貼る行動や、家族以外の個体に葉を塗ってあげる事例は報告されています。

しかし今回のような「虫」を塗るケースはきわめて珍しく、世界的にも新たな発見となりました。

さらに興味深いことに、この「虫の塗り薬」行動は、ガボン(中部アフリカ)に生息する別グループのチンパンジーでも観察されていたことが判明しました。

このことは、虫を用いた治療行動が、特定の地域や個体だけでなく、より広い範囲のチンパンジーで見られる“文化的”な行動の一種かもしれないことを示唆しています。

次ページ行動の意味と進化、そして「ケア」の起源

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