直立二足歩行は「地上」と「樹上」のどちらで生まれた?
直立二足歩行は、ヒトを他の類人猿から切り離す大きな特徴です。
長年の間、直立二足歩行はヒトの祖先が樹上から降りて、地上生活に移行したことで誕生したと信じられてきました。
専門家はこれを「サバンナ仮説(savanna hypothesis)」と呼んでいます。
東アフリカでは約1000万〜250万年前にかけて、気候変動により熱帯雨林が縮小し、木が少なく乾燥した開放的なサバンナが拡大しました。
するとヒトの祖先たちは、樹上での食料確保が困難になったことで地上での採集を始めます。
しかし、今までの四足歩行では、地上の背の高い草に隠れて周囲が見渡せないため、立ち上がった方が便利であり、また遠くから近づく天敵にも気づきやすくなりました。
こうした適応の中で、直立二足歩行が発達したと考えられているのです。
その一方で、サバンナ仮説に疑問を呈する専門家も多くいます。
というのも、二足歩行に移行した時期の祖先の化石記録が限られていたり、あるいはそれに合致する化石でも、視界の開けたサバンナではなく、かつての密林地帯から見つかったりしているからです。
これを受けて、直立二足歩行は木々の上で獲得されたのではないかとする「樹上仮説(arboreal hypothesis)」も提唱されています。
樹上での二足歩行のメリットとして挙げられるのが、より高い場所や枝の先についた食物を採れるようになることです。
しかし、こちらの仮説もまだ推測の域を出ていません。
そこで研究チームは、どちらの仮説がより有力なのかを確かめるべく、野生チンパンジーを対象とした観察調査を行いました。