水面に姿が映る岸辺を、口に何かをくわえて歩く、灰色がかった茶色のネズミ No.0035

ナゾロジー図鑑 ・ 生き物

ネズミ

Muridae

人のそばで、世界中にくらす小さな哺乳類。
一生のびる前歯と、超音波の「笑い声」をもつ。

ナゾロジーの記事
36本
ネズミ科のなかま
約870種
ドブネズミの妊娠期間
21〜24日

ネズミは齧歯目(ネズミ目)の小さな哺乳類の呼び名で、日本の家にはドブネズミ・クマネズミ・ハツカネズミがすみます。一生のびる前歯をもち、増える速さは「ねずみ算」の語源に。くすぐると超音波で「笑う」など、心の働きも研究されています。

図鑑データ

分類
哺乳類 › 齧歯目(ネズミ目)› おもにネズミ科。広い意味では、齧歯目のいくつかの科をまとめた呼び名
学名
Muridae(ネズミ科)。ドブネズミは Rattus norvegicus、クマネズミは Rattus rattus、ハツカネズミは Mus musculus
英名
rat(ラット、大きめのもの)、mouse(マウス、小さめのもの)
漢字
鼠
種の数
ネズミ科だけで約870種
大きさ
ドブネズミは頭胴長186〜280mm・体重150〜500g。ハツカネズミは頭胴長57〜91mm・体重約10〜25g
体のつくり
上下に1対ずつ、一生のびつづける前歯(門歯)。犬歯はない。多くは毛のほとんどない長い尾をもつ
すみか
ネズミ科はもともとユーラシア・アフリカ・オーストラリア。ドブネズミなどは人とともに南極大陸以外の世界中に広がった
日本では
家ネズミのドブネズミ・クマネズミ・ハツカネズミと、アカネズミ・ハタネズミなどの野ネズミ
食べもの
雑食。穀物・種子・果実、昆虫、肉や魚など(種によって好みがちがう)
増え方
ドブネズミは妊娠期間21〜24日、1回に平均8〜9匹。条件がよければ一年中繁殖する
寿命
ドブネズミは野外で1〜2年、飼育下で3年ほど

ネズミとは(何類? 何科? ラットとマウスのちがい)

ネズミは、哺乳類の「齧歯目(げっしもく)」(ネズミ目)に入る、小さな動物たちの呼び名です。1つの種の名前ではなく、いくつかの科のなかまをまとめた言い方で、せまい意味では「ネズミ科」のなかまを指します。ネズミ科だけでも、約870種が知られています。

齧歯目は、上下のあごに1対ずつ、一生のびつづける鋭い前歯(門歯)をもつグループです。哺乳類の種のおよそ40%が齧歯目で、リスやビーバー、ヤマアラシ、ハムスターなども同じ齧歯目のなかまです。英語の名前 Rodentia は、ラテン語の「かじる」ということばからきています。

水面に姿が映る岸辺を、口に何かをくわえて歩く、灰色がかった茶色のネズミ
水辺を歩くドブネズミ写真: Charles J. Sharp(CC BY-SA 4.0) / Wikimedia Commons

日本語ではまとめて「ネズミ」と呼びますが、英語では、ドブネズミのような大きめのネズミを rat(ラット)、ハツカネズミのような小さめのネズミを mouse(マウス、複数形は mice)と呼び分けます。日本語の「ネズミ」にそのまま当たる英語のことばはありません。日本では、実験用に改良されたハツカネズミを「マウス」、ドブネズミの白い品種から作られた実験動物を「ラット」と呼んでいます。

漢字では「鼠」と書き、「ねずみ」と読みます。ネズミのほとんどは夜行性です。ネズミ上科のなかまの多くは、丸い耳、とがった鼻先、長い尾という、よく似た見た目をしています。見た目だけで種を見分けるのはむずかしく、頭の骨や歯で見分けます。

ネズミの種類(家ネズミと野ネズミ)

日本のネズミは、くらす場所で2つに分けられます。人の家やそのまわりにすむ「家ネズミ」と、野山や田畑にすむ「野ネズミ」です。日本の家ネズミは、ほぼ次の3種にかぎられます。

  • ドブネズミ:家ネズミの中でいちばん大きな種です。水辺やしめった場所を好み、下水や地下街などに多くいます。実験動物の「ラット」やペットの「ファンシーラット」は、ドブネズミを家畜化したものです。
  • クマネズミ:高い所に登るのが得意で、天井裏やビルの中によくすみつきます。尾が長く、耳が大きいのが特徴です。
  • ハツカネズミ:3種の中でいちばん小さな種です。家のまわりのほか、草地や田畑、河原などにもすみます。実験動物の「マウス」は、ハツカネズミを改良したものです。
白い雪の上にうずくまる、大きな耳の灰色の小さなネズミ
雪の上のハツカネズミ写真: Dion Art(CC BY-SA 4.0) / Wikimedia Commons

野ネズミには、アカネズミやハタネズミなどがいます。アカネズミは日本だけにすむ固有種で、北海道から九州までの森や田畑のあぜ、川原のやぶなどにすみます。ハタネズミは、ハムスターと同じキヌゲネズミ科のなかまです。

コケの生えた地面にいる、大きな黒い目と耳をもつ、背中が茶色でおなかが白いネズミ
アカネズミ(日本の野ネズミ)写真: りなべる(CC BY 4.0) / Wikimedia Commons

ハムスターやモルモットはネズミ?

名前に「ネズミ」がつく動物や、ネズミに似た動物はたくさんいます。ハムスターは、齧歯目のキヌゲネズミ科のなかまで、ネズミ科とは別の科です。体はずんぐりしていて尾がとても短く、肩まで広がる大きなほお袋をもっています。モルモット(テンジクネズミ)や、木の上でくらすヤマネも齧歯目ですが、それぞれ別の科です。

一方、トガリネズミやハリネズミは、名前に「ネズミ」とついていますが、齧歯目ではありません。真無盲腸目という、別のグループの動物です。ハダカデバネズミについては、最後の見出しで紹介します。

大きさと体のつくり(特徴・歯・しっぽ)

家ネズミ3種の大きさは、次のとおりです(頭胴長は、鼻先から尾のつけ根までの長さ)。

  • ドブネズミ:頭胴長186〜280mm、体重150〜500g。尾は頭胴長よりやや短めです。耳は小さく、前に倒しても目に届きません。
  • クマネズミ:頭胴長146〜240mm、体重150〜200g。尾は頭胴長と同じか、やや長めです。耳は大きく、前に倒すと目がかくれます。
  • ハツカネズミ:頭胴長57〜91mm、尾長42〜80mm、体重は約10〜25gです。

飼われているドブネズミでは、体重が800gに達することもあります。ただし、「ネコほどの大きさのネズミがいた」という話は、大げさに言ったものか、別の大きな齧歯類との見まちがいとされています。

赤土の上で、長い尾をくねらせている、大きな耳の茶色のネズミ
クマネズミ写真: Davidvraju(CC0) / Wikimedia Commons

なぜかじる? 一生のびる前歯

ネズミをふくむ齧歯類の前歯は、一生のびつづけます。前歯の表側だけがかたいエナメル質でおおわれていて、裏側のやわらかい部分のほうが早くすりへるため、前歯の先は、いつもノミ(大工道具)の刃のように鋭くなっています。犬歯はなく、前歯と奥歯のあいだには、歯のないすき間があります。

のびつづける前歯は、上下の歯をすり合わせたり、ものをかじったりすることで、すりへっていきます。かみ合わせがずれるなどして前歯がうまくすりへらないと、のびすぎて、食べものを食べられなくなることがあります。ネズミは、食べものを探したり、通り道や巣を作ったりするために、食べもの以外のものもよくかじります。家に入ったハツカネズミは、電気の配線や木の家具などをかじって、被害を出すことがあります。

毛の生えた口もとからのぞく、上下の細長い前歯のアップ
ハツカネズミの前歯写真: Magne Flåten(CC BY-SA 4.0) / Wikimedia Commons

しっぽの役わり

ネズミ科のなかまの多くは、毛がほとんどない、長い尾をもっています。尾には血管がたくさん通っていて、体の熱を外へにがす役目をしています。ハツカネズミでは、尾が体の熱をにがすおもな器官で、尾に流れる血の量を変えて、尾の皮ふの温度を最大10℃も上げることができます。尾は、登ったり走ったりするときに、体のバランスをとるのにも使われます。

敵に尾をつかまれると、尾のいちばん外側の皮がはがれて抜け、そのすきに逃げることもあります。

ナゾロジーでくわしくネズミの尻尾はなぜ気持ち悪いのか?「ネズミの尻尾」の科学

目・鼻・耳・ひげ

ドブネズミは耳がとてもよく、人には聞こえない超音波も聞きとれます。においをかぎ分ける力も、とても発達しています。一方で、目はあまりよくありません。赤と緑の区別がつきにくい人に近い色の見え方をしていると考えられていますが、人には見えない紫外線を感じとることができます。ハツカネズミは、ひげで物の表面や空気の動きを感じとります。

ネズミの能力(跳ぶ・登る・泳ぐ)

  • 跳ぶ:ハツカネズミは、真上に最大45cmほど跳び上がることができます。
  • 登る:クマネズミは、手足の肉球にすべり止めのひだがあり、登るのが得意です。電線や水道管の上もじょうずに伝って歩きます。ドブネズミも、細くて丸い金属の柱をよじ登って、鳥のえさ台に届いたことが観察されています。
  • 泳ぐ:ドブネズミは泳ぎが得意で、水面でも水中でも泳げます。下水管を泳いでさかのぼり、トイレに出てくることもあります。
  • すき間をくぐる:ネズミは、体の大きさのわりにとても小さなすき間でも通りぬけられます(小さなものでは1cmほどといわれます)。
小さな葉が浮かぶ水面から、頭と背中を出して泳ぐ茶色のネズミ
湖を泳いでわたるドブネズミ写真: Biswarup Ganguly(CC BY 3.0) / Wikimedia Commons

反対に、できないこともあります。ハツカネズミは、ほかの多くの齧歯類と同じように、食べたものを吐くことができません。

どこにいる?(家・町・野山)

ネズミ科のなかまは、もともとユーラシア、アフリカ、オーストラリアに広くすみ、熱帯の森からツンドラまで、さまざまな環境で見られます。南北アメリカにはもともといませんでしたが、ハツカネズミやクマネズミは、人に運ばれて世界中に広がりました。

ドブネズミは、まれな例外をのぞいて、人の住む場所ならほぼどこにでもいて、南極大陸をのぞくすべての大陸にすんでいます。アジアが原産と考えられていて、18世紀にはヨーロッパ各地に広がりました。クマネズミはインドや東南アジアが原産と考えられています。ドブネズミは寒さに強く、北海道や富士山などの雪の深い所では、人家からはなれた雪の下にすむこともあります。

日本の家ネズミのすみ分け(東京のビルにはクマネズミ)

昔の日本の家では、天井裏に巣をつくるクマネズミと、台所や下水の穴にすむドブネズミが、すむ場所を分け合っていました。第二次世界大戦のあと、都市化とともに、しめった地下街や下水を好むドブネズミが増えました。ところが1970年ごろから高いビルが次々に建つと、乾いた高い所を好み、配管を伝って階から階へ自由に行き来できるクマネズミが目立つようになりました。

東京都内の調査では、ネズミについての相談のうち、種がわかったものの9割以上がクマネズミでした。住宅の屋根裏にすむネズミも、ほとんどがクマネズミです。ビルの中は一年中温度がほぼ一定なので、クマネズミは冬でもさかんに繁殖します。クマネズミはワナへの警戒心が強く、殺鼠剤(ネズミを殺す薬)がききにくい「スーパーラット」も増えています。一方で、再開発で地中のすみかを追われたドブネズミが、渋谷や新宿などの繁華街でもよく見られるようになりました。

家のどこにネズミがいるかは、通り道やフンからわかることがあります。クマネズミが壁ぞいに通る「ネズミ道」には、毛皮がこすれて、黒や灰色のよごれ(ラットサイン)が残ります。また、ハツカネズミのフンは黒く、長さ4〜6mm、太さ1〜3mmほどで、かびくさいにおいがします。

壁の角の床に、黒い小さなつぶが点々と散らばっている
ハツカネズミのフン写真: NY State IPM Program at Cornell University(撮影: Matt Frye)(CC BY 2.0) / Wikimedia Commons

なぜ家に入ってくる?

ネズミは、食べもの、水、暖かさ、かくれ場所を求めて、人の家に入りこみます。ハツカネズミは、春と夏はおもに外でえさをさがし、秋から冬にかけて、暖かさと食べものを求めて建物の中に入ってきます。流しの下やゴミの近く、壁の中や戸棚の中など、かくれ場所と食べもの・水が手に入りやすい所にすみつきます。

高い山にも、ネズミ

ネズミのなかまには、きびしい環境でくらすものもいます。2020年に発表された調査では、南アメリカのチリ北部にある火山の山頂(標高6,739m)で、葉のような耳をもつ「リーフイヤーマウス」(Phyllotis 属)のなかまがつかまりました。これは、哺乳類がすむ高さの世界記録です。2026年に発表された研究では、このネズミ(Phyllotis vaccarum)が、海の近くから6,700mをこえる山頂まで、とても広い高さにすんでいること、高い所の集団は、酸素の少ない中でも体の熱を多くつくれるように進化していることがわかりました。

ナゾロジーでくわしく標高7000m級で生きるネズミーー哺乳類の生存限界を大幅更新

ニューギニアの高い山(ウィルヘルム山の標高3,200〜3,700m)の森には、オーストラリア・オセアニアの地域でいちばん大きな齧歯類とされる、Mallomys istapantap というネズミがすんでいます。2025年には、このネズミが生きた姿で、野生下ではじめて科学的に記録されました。

何を食べる?(野生では? チーズは好き?)

ネズミの多くは雑食で、植物も動物も食べます。ネズミ科のなかまには、植物と小さな無脊椎動物を食べるものが多く、冬にそなえて種子などをたくわえるものもいます。なかには、ミミズやある種の菌類、水生昆虫だけを食べる、好みのせまい種もいます。

  • ドブネズミ:ほとんど何でも食べますが、穀物が食べものの大きな部分をしめます。クマネズミとくらべると、魚や肉など動物質のものを好みます。高たんぱくの食事をとるぶん、尿を出すために水をたくさん飲まなければならず、水辺を好むのはこのためです。鳥のヒナやハツカネズミ、小さなトカゲなどをとらえて食べることもあります。
  • クマネズミ:穀物や果実などの種実類が食べものの半分以上をしめ、肉や魚はあまり好みません。ゴキブリやガなどの昆虫は好んで食べます。1日に食べる量は約15g、飲む水は約15mLです。
  • ハツカネズミ:種子や穀物、雑草や花を食べ、小さな昆虫もとらえます。ペットフードや家畜のえさも食べます。
  • アカネズミ(野ネズミ):植物の種子や根などをおもに食べ、昆虫を食べることもあります。秋にはドングリやクルミを、巣穴や地中などにたくわえます。

野生のドブネズミは、地域によって、食べもののとり方がちがいます。イタリアのポー川の岸には、水にもぐって貝をとる群れがいて、なかまから学んで広がった行動と考えられています。

ネズミは、自分のフンを食べることもあります。ハツカネズミは、腸の中の細菌がつくった栄養をとりこむために、自分のフンを食べます。

共食いについては、ハツカネズミをふくむ多くの齧歯類で、おとなが同じ種の子を殺す「子殺し」が知られています。理由として、栄養をとるため、えさなどの取り合い、などが考えられています。

チーズは好き?

「ネズミはチーズが好き」というイメージは、本当でしょうか。関西学院大学の中島定彦さんたちが2015年に発表した論文では、ラットもマウスも、ふだんのえさ(固形飼料)よりチーズを好みました。同じ年の別の論文では、マウスはアーモンドやクラッカー、干しいもよりもチーズを好みました。中島さんは、ネズミはチーズを好まないとした以前の研究は妥当でない、と指摘しています。

おいしいものを食べたときの「声」も研究されています。2026年に発表された研究では、オスのラットがチョコレートを食べているときに、40kHzの「逆U字型」と呼ばれる超音波の鳴き声を、とくに多く出すことがわかりました。ふつうのえさを食べるときには、この鳴き声はずっと少なくなりました。

ナゾロジーでくわしくラットはチョコを食べながら「おいしい」と鳴いていた

鳴き声と心(笑う・助け合う・音楽にのる)

ネズミは、なかまとの連絡に、人には聞こえないほど高い音「超音波」をよく使います。ドブネズミは、23〜116kHzの超音波を出してコミュニケーションをしています。人の耳に聞こえる鳴き声を出すことは少なく、出すのは、おびえたときや痛いとき、いらだったときが多いとされています。

ドブネズミの子は、超音波の鳴き声で母親を呼びます。ハツカネズミのオスは、メスに求愛するとき、30〜110kHzの超音波で鳴きます。この鳴き声は複雑で、鳥のさえずりにたとえられています。

くすぐると「笑う」ラット

ラットは、なかまとじゃれ合って遊ぶときや、人にくすぐられたときに、短く高い超音波で「チャープ」と鳴きます。この声は笑い声にたとえられ、楽しい気持ちと結びついていると考えられています。くすぐられたラットは、くすぐる人になつき、自分からくすぐってもらいに来るようになります。ただし、年をとると、この声はあまり出さなくなるようです。

2016年に発表された研究では、くすぐられたラットが鳴き声を上げたり、人の手に近づいたり、喜んでぴょんと跳びはねたりすることを確かめました。このとき、ラットの脳では、胴体の感覚を受けもつ部分(体性感覚野)の神経細胞が強く活動していました。不安を感じる環境では、くすぐっても鳴き声が出にくくなりました。2023年の研究では、脳の奥にある「中脳水道周囲灰白質」の外側の部分が、遊びとくすぐりへの反応に欠かせないことが示されています。

ナゾロジーでくわしくラットをひたすらくすぐる過酷な研究で「笑いと遊び心の中枢」を探す

くすぐりは、人とラットのきずなも深めます。2025年に発表された研究では、若いラットを人の手でくり返しくすぐると、ラットが人の手に強くなつくようになりました。このとき、脳の視床下部の一部で、オキシトシンというホルモンを受けとるしくみ(受容体)が増えていて、オキシトシンの働きをおさえると、手になつく行動が減りました。ハツカネズミでも、人の手に近づく個体を選んでかけ合わせてきた「なつきマウス」は、人の手と追いかけっこをしたり、さかんに鳴いたりして、人と遊ぶことが報告されています。

なかまを助ける

ラットには、困っているなかまを助ける行動が見られます。2011年に発表された実験では、せまい筒に閉じこめられたなかまのそばにラットを入れると、何回かくり返すうちに、ラットは筒の扉を開けてなかまを助け出すようになりました。からっぽの筒や、物が入った筒は開けませんでした。なかまの入った筒とチョコレートの入った筒を両方置くと、ラットは両方を開け、多くの場合チョコレートをなかまと分け合いました。

ただし、だれでも助けるわけではありません。2021年の研究では、ラットは自分と同じ系統のなかまは助けましたが、知らない系統のラットは助けませんでした。2020年の研究では、助けることのできない「傍観者」のラットがいると助ける行動が減り、人の「傍観者効果」とよく似た特徴があることがわかりました。

ナゾロジーでくわしくラットに仲間を助け他者を見捨てる「差別の脳回路」が見つかる

においでも、気持ちが伝わります。2023年に発表された研究では、ドブネズミの首のあたりから出る2-メチル酪酸という物質が、実験用のラットでも野生のドブネズミでも、なかまの恐怖の反応をやわらげることがわかりました。研究チームは、これを「安心させるフェロモン」と考えています。

運転もリズムも

ラットは頭がよく、訓練するとさまざまな行動を覚えます。

  • 車の運転:ラット用の小さな車をあやつる訓練をすると、ラットは前に進んだり、曲がったりできるようになりました。遊び道具などをそろえた刺激の多い環境で育ったラットのほうが、よく上達しました(2020年の研究)。
  • リズムにのる:1分間に120〜140拍のテンポの音楽を聞かせると、ラットはリズムに合わせて頭を動かしました。このテンポは、人がリズムをとりやすいテンポと同じです(2022年の研究)。
  • 性格と問題解決:野生に近い環境でくらす121匹のハツカネズミを調べた研究では、内気な個体のほうが課題に何度も通い、そのぶん課題を解けることが多くなりました(2025年の研究)。
  • においで探す仕事:においをかぎ分ける力が高く、訓練しやすいので、地雷や結核を見つける仕事をするネズミ(アフリカオニネズミ)もいます。

増え方と寿命(繁殖力と「ねずみ算」)

ネズミは哺乳類なので、卵ではなく赤ちゃんを産み、乳で育てます。ハツカネズミの子は、目も耳の穴も閉じていて、毛がほとんどない状態で生まれます。

硬貨の上に乗った、毛のないピンク色の小さな2匹の赤ちゃんネズミ
生まれたばかりのハツカネズミ写真: Gerbil(CC BY-SA 4.0) / Wikimedia Commons

ネズミは、とても速く増えます。

  • ドブネズミ:条件がよければ一年中繁殖し、春と秋に多く子を産みます。妊娠期間は21〜24日で、1回に1〜18匹、平均8〜9匹の子を産みます。子は生後20日ほどで乳ばなれします。メスは出産のすぐあとにまた妊娠でき、子に乳をあげながら、おなかで次の子を育てることもできます。
  • ハツカネズミ:妊娠期間は19〜21日ほどで、1回に3〜14匹(平均6〜8匹)の子を産みます。1匹のメスが、1年に5〜10回出産することもあります。メスの発情周期は4〜6日です。子は生後21日ごろに乳ばなれします。「ハツカ(二十日)ネズミ」という名前は、妊娠期間が20日ほどであることからついたとされます。

ネズミがどんどん増えるようすから、和算(日本の昔の数学)では、一定の倍率で増えていく数の計算を「ねずみ算」と呼びました。ドブネズミは、条件がよければ1年で2匹から15,000匹にまで増えうる、という計算もあります。ドブネズミの集団は、駆除などで大きく数が減っても、残ったネズミがたくさん子を産むようになり、すぐにもとの数にもどります。

ネズミの寿命

ネズミは天敵が多いこともあって、野生での一生は短いものです。

  • ドブネズミ:野外で1〜2年、飼育下で3年ほど。野生では、1年のうちに95%が死ぬという見積もりもあります。
  • クマネズミ:野外で1〜2年ほど。
  • ハツカネズミ:野生では4か月ほどといわれ、1年もたないことがほとんどです。飼育下では1〜3年ほど生きます。
  • ファンシーラット(ペット):健康なら2〜3年。

ネズミの天敵は、ネコ、イタチ、フクロウ、トビ、ノスリ、カラス、モズ、アオダイショウ、マムシなどです。

人とのかかわり(病気・実験・ペット・名前の由来)

なぜ嫌われる?(病気と害)

ネズミは昔から、とり入れたあとの穀物を食べたり、家財をかじったりする「害獣」とされてきました。今でもドブネズミ・クマネズミ・ハツカネズミの3種は、病原体を運んだり、建物や電気機器、通信ケーブルなどをかじったりして、人に直接・間接の害をあたえる「衛生害獣」とされ、駆除の対象になっています。

ネズミがうつすことのある病気には、ペスト、ラッサ熱、レプトスピラ症、ハンタウイルス感染症などがあります。レプトスピラ症は、感染した動物の尿を通してうつります。

とくに有名なのがペストです。ペスト菌は、ネズミにつくノミ(Xenopsylla cheopis など)によって運ばれます。14世紀のヨーロッパで大流行した「黒死病」は、クマネズミと、そのノミが広げたと長く考えられてきました。ただし近年は、ネズミだけでは広がりの速さを説明できず、人どうしでうつったことも大きかったとする研究が出ています。一方、ハツカネズミは、ラットよりノミがつきにくく、そのノミも人をあまり刺さないため、ふつうはペストを運ばないとされています。

顕微鏡で写した、黄色っぽい半透明の体の中に黒っぽいかたまりが見えるノミ
ペスト菌を運ぶネズミのノミ写真: CDC / Dr. Pratt(Public domain) / Wikimedia Commons

島の生き物をおびやかす外来種

クマネズミは、何千年も前から船にまぎれこみ、人とともに世界中の島へ運ばれてきました。世界でとくに害の大きい侵略的外来種の一つとされています。天敵のいない島で鳥の卵やヒナを食べるなどして、多くの鳥や小さな哺乳類、爬虫類、植物の絶滅にかかわってきました。海鳥や爬虫類の絶滅の40〜60%にネズミがかかわっている、と考える専門家もいます。日本でも、北海道の渡島大島で、ドブネズミがオオミズナギドリの卵やヒナを食べ、大きな被害が出ています。

2023年に発表された研究では、クマネズミのいる島のまわりのサンゴ礁では、ネズミのいない島のまわりにくらべて、サンゴ礁の魚のなわばりが広く、なわばりを守る争いに使う時間が短いことがわかりました。ネズミのいる島では海鳥が少なく、海鳥が運んでくる栄養がへって、魚の得られるえさの質が下がったためと考えられています。

ナゾロジーでくわしく侵略的外来種ネズミは海中の魚の行動まで変えていた!? 外来生物の意外な悪影響

法律ではどうあつかわれている?(駆除と鳥獣保護管理法)

日本の野生の鳥や哺乳類は、「鳥獣保護管理法」によって、つかまえることが基本的に禁止されています。ネズミのなかまも、この法律の対象です。ただし、ドブネズミ・クマネズミ・ハツカネズミの3種は、「環境衛生に害をあたえる鳥獣」として、この法律の対象からはずされています。そのため、家ネズミの駆除に、この法律の許可はいりません。アカネズミなどの野ネズミは、この法律の対象です。

なぜ実験に使われる?

ネズミは、医学や生物学の研究に欠かせない実験動物です。哺乳類の実験動物でいちばん多く使われているのはマウス(ハツカネズミ)です。人と比較的近い関係にあって遺伝子がよく似ていること、飼いやすく扱いやすいこと、増えるのが速いことが理由です。研究では、何代も近親交配をくり返して、個体どうしの遺伝的なちがいをほとんどなくした「系統」がよく使われます。

ラット(ドブネズミ)は、頭がよく環境になじみやすいことから、知能や学習、薬物依存などの研究でよく使われます。白いラットがはじめて実験に使われたのは1828年の絶食の実験で、実験用ラットは、純粋に研究のために家畜化された最初の動物とされています。1906年にアメリカのウィスター研究所で生まれた白いラット「ウィスターラット」は今もよく使われていて、実験用ラットの系統の半分以上が、その子孫です。

手袋をした手で胴を支えられた、白い毛と赤い目のラット
実験用のウィスター系ラット写真: Janet Stephens(アメリカ国立がん研究所)(Public domain) / Wikimedia Commons

世界中で使われている白い実験用ラットの祖先は、日本のネズミかもしれません。2012年に京都大学の研究チームが、世界各地の白いラット117系統の遺伝子を調べたところ、どれも1つの祖先から生まれ、頭巾をかぶったような模様(フーデッド)のラットから生まれたことがわかりました。この模様のラットは20世紀のはじめに「日本のラット(Japanese rat)」と呼ばれていたことから、日本のラットがヨーロッパかアメリカに運ばれ、そこから白いラットが生まれた可能性があると考えられています。

ペットとしてのネズミ

日本では江戸時代から、ネズミを飼って楽しむ文化がありました。大阪では、変わった毛色のネズミが大切にされ、1775年の『養鼠玉のかけはし』のような飼い方の本も出版されました。江戸時代から飼われていた白黒まだらのハツカネズミの子孫は、今は「パンダマウス」の名前で、ふたたび日本で飼われています。

ペットのラットとしていちばんよく飼われているのは、ドブネズミを家畜化した「ファンシーラット」です。人によくなれ、訓練もしやすく、さまざまな毛色や模様があります。飼われているラットが病気をうつす心配は、ネコやイヌなどのペットと同じくらいとされています。

白い背景の前で、こちらを見ている、黒い体に白い鼻すじと白いおなかのネズミ
ペットのファンシーラット写真: AlexK100(CC BY-SA 2.0) / Wikimedia Commons

名前の由来と、十二支の「子」

「ネズミ」ということばの由来には、いくつかの説が唱えられてきました。盗みをする動物なので「ぬすみ」から、寝ている間に盗むので「寝盗(ねぬすみ)」から、暗い所(根)に棲むので「根棲み」から、といった説です。

十二支では、ネズミは最初の「子(ね)」の動物です。ネズミがよく増えることにちなんで、子孫繁栄の願いがこめられてきました。七福神の大黒天は、ネズミを使いとしています。

ハダカデバネズミなど、「ネズミ」と呼ばれる別のなかま

名前に「ネズミ」とついていても、ネズミ科ではない齧歯類はたくさんいます。その中でも、長生きでがんになりにくいことで知られるのが、ハダカデバネズミです。

ハダカデバネズミ(老化しにくいネズミ)

ハダカデバネズミは、アフリカ東部のエチオピア、ケニア、ジブチ、ソマリアの地下にすむ齧歯類です。ネズミ科とは別のなかまで、以前はデバネズミ科とされていましたが、近年は、独立したハダカデバネズミ科(Heterocephalidae)に分ける考え方が出ています。体はマウスほどの大きさで、名前のとおり体にほとんど毛がなく、大きな前歯が口の外につき出ています。くちびるが前歯のうしろで閉じるので、前歯で土を掘っても、口の中に土が入りません。

赤茶色の台の上の、しわのあるピンク色の肌と、つき出た前歯をもつ毛のない動物
ハダカデバネズミ写真: Roman Klementschitz(CC BY-SA 3.0) / Wikimedia Commons

ハダカデバネズミは、アリやハチのような「真社会性」の群れでくらす、哺乳類ではめずらしい動物です。群れは平均75〜80匹ほどで、繁殖するのは1匹の女王(繁殖メス)と、1匹か数匹のオスだけです。ほかの多くのなかまは子を産まず、トンネル掘りや食べもの集め、巣の守り、子の世話などを分担します。

2025年に発表された研究では、5つの群れの102匹に電子タグをつけ、30日間行動を記録しました。すると、繁殖する個体どうしはいつも近くでいっしょに行動していて、強いきずなでむすばれていました。一方、繁殖しない個体は、行動のちがいから6つのタイプに分かれることがわかりました。

ナゾロジーでくわしくハダカデバネズミの群れに「トイレ掃除係」がいた

群れどうしの争いもあります。野生の群れの調査では、群れがとなりの群れの巣にせめこんで、なわばりを広げることがわかりました。せめこんだ群れが、乳ばなれ前の子を連れ去り、自分たちの働き手にすることもあると考えられています。

体のしくみも、ふしぎなことばかりです。

  • 長生き:齧歯類でいちばんの長生きで、30年をこえて生きます。2018年に発表された研究では、3,000をこえる記録を調べ、年をとっても死ぬ危険が高くならないことを示しました。ほかの哺乳類では、ふつう年とともに死ぬ危険が高くなります。
  • 老化した細胞をためない:2023年に熊本大学などの研究チームは、ハダカデバネズミの細胞を人工的に老化させると、その細胞がやがて死ぬことを発見しました。細胞にたまったセロトニンから過酸化水素ができ、細胞を死なせていました。マウスの細胞では起こらない現象で、老化した細胞をためこまないことが、老化しにくさにつながっていると考えられています。
  • がんになりにくい:がんにとても強いことで知られています。ただし、動物園で生まれた個体などで、がんが見つかった例もあります。
  • 酸素がなくても18分:2017年に発表された実験では、酸素がまったくない状態でも18分間生きのび、目立った傷も残りませんでした。このとき、ブドウ糖ではなく果糖をエネルギー源に使っていました。
  • 体温を調節しない:哺乳類なのに、体温を一定にたもつしくみがほとんどなく、まわりの温度に合わせて体温が変わります。寒いときは、なかまどうしで身を寄せ合います。
  • 痛みを感じにくい:皮ふは、酸やトウガラシの辛み成分(カプサイシン)にふれても痛みを感じません。
  • 卵子のもとを長くたもつ:2023年の研究で、卵子づくりがすべて生まれたあとに行われること、3歳の個体でも卵子のもとになる細胞が見つかることが示されました。約30年にわたって子を産む力をたもつしくみと考えられています。
ナゾロジーでくわしくハダカデバネズミの長寿の秘密!老化細胞が細胞死を起こしていた

そのほかの「ネズミ」

ほかにも、ネズミと呼ばれる齧歯類はたくさんいます。日本だけにすむヤマネ(ヤマネ科)は、国の天然記念物で、平均気温が9℃以下になると、木のうろや落ち葉の下などで冬眠します。中国の内モンゴルの草原にすむハタネズミのなかま(Lasiopodomys brandtii)は、天敵のモズがいると、背の高い草を切りたおします。2022年に発表された研究では、これによってモズがやって来ることが減り、ネズミが食べられる割合も下がることがわかりました。

よくある疑問

ネズミは何類? 何科? 何目?
ネズミは哺乳類です。分類では齧歯目(ネズミ目)に入り、ドブネズミ・クマネズミ・ハツカネズミなど、ふつう「ネズミ」と呼ばれる動物の多くはネズミ科のなかまです。広い意味では、齧歯目のほかの科のなかまも「ネズミ」と呼ばれることがあります。
ネズミとハムスターの違いは?
どちらも齧歯目ですが、ハムスターはネズミ科ではなく、キヌゲネズミ科のなかまです。ハムスターは体がずんぐりしていて尾がとても短く、肩まで広がる大きなほお袋をもちます。ドブネズミやハツカネズミは、長い尾をもっています。
ネズミの寿命は? 何歳まで生きる?
野外のドブネズミやクマネズミは1〜2年ほどで、ドブネズミは飼育下で3年ほど生きます。ハツカネズミは野生では4か月ほど、飼育下では1〜3年ほどです。ペットのファンシーラットは、健康なら2〜3年生きます。ネズミと呼ばれるなかまでも、ハダカデバネズミは30年をこえて生きます。
ネズミは一度に何匹産む? 繁殖期はいつ?
ドブネズミは1回に1〜18匹、平均8〜9匹の子を産みます。条件がよければ一年中繁殖し、春と秋に多く産みます。ハツカネズミは1回に3〜14匹(平均6〜8匹)で、1匹のメスが1年に5〜10回出産することもあります。
ネズミはなぜ家に入ってくる? どこから入る?
食べもの、水、暖かさ、かくれ場所を求めて入ってきます。ハツカネズミは、秋から冬にかけて、暖かさと食べものを求めて建物に入ります。ネズミは小さなすき間からでも入りこみ(小さなものでは1cmほどといわれます)、クマネズミは配管などを伝って、ビルの高い階にも行き来します。ドブネズミは、下水管を泳いでトイレに出てくることもあります。
ネズミはチーズが好きなの?
研究では、好むという結果が出ています。2015年に発表された論文では、ラットもマウスも、ふだんのえさ(固形飼料)よりチーズを好みました。別の論文では、マウスはアーモンドやクラッカー、干しいもよりもチーズを好みました。
ネズミは冬眠する?
ハツカネズミは冬眠しないことが知られています(野生では寒い時期には繁殖しませんが、冬眠はしません)。クマネズミは、一年中温度がほぼ一定のビルの中では、冬でもさかんに繁殖します。ドブネズミは寒さに強く、雪の深い所では雪の下にすむこともあります。一方、ネズミと呼ばれるなかまのヤマネ(ヤマネ科)は、平均気温が9℃以下になると冬眠します。
ネズミの鳴き声は? なぜ鳴くの?
ネズミのふだんの鳴き声の多くは、人には聞こえない高い超音波です。ドブネズミは23〜116kHzの超音波で、なかまとコミュニケーションをしています。人に聞こえる鳴き声は、おびえたときや痛いときなどに出ることが多いとされます。ラットは遊んだりくすぐられたりすると、笑い声にたとえられる超音波で鳴きます。

ナゾロジーで読む36本

  1. 01 ラットはチョコを食べながら「おいしい」と鳴いていた
  2. 02 標高7000m級で生きるネズミーー哺乳類の生存限界を大幅更新
  3. 03 人間に愛されて育ったラットは正義感と善悪判断を芽生えさせる
  4. 04 ハダカデバネズミの群れに「トイレ掃除係」がいた
  5. 05 人間大好き「なつきマウス」36世代を経て人間と遊ぶようになった

近いなかまの図鑑

同じ哺乳類

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表紙の写真: Charles J. Sharp(CC BY-SA 4.0) / Wikimedia Commons
ほかの写真のクレジットは、それぞれの写真のページにあります。
この図鑑は、参考文献の資料をもとに、ナゾロジー編集部がまとめています。