ネズミも音楽に合わせて「ヘドバン」できると判明!
ライブ演奏会場では、しばしば音楽のリズムにあわせて頭を振るヘッドバンギング(ヘドバン)に浸っている人々を見かけます。
私たちにとっては何気ない光景に思えますが「音楽にあわせて体を動かす」には、聞こえてくる音の中から特定のリズムだけを認識し抽出するという、複雑な情報のフィルタリングが必要になります。
そのためこれまでは、クラシック音楽やPOPミュージックなど人間製の音楽にあわせて体を動かせるのは、同じ人間だけが可能であると考えられていました。
しかし近年ネット上など動物を映したさまざまな動画ではしばしば、人間が演奏するギターやピアノに呼応するように、動物たちが吠えたり体を動かす様子が映し出されています。
この微笑ましい様子は、音楽にあわせて動きたいという衝動が人間だけでなく動物にも存在する可能性を示します。
しかし動物たちが本当に音楽のリズムに反応しているのか、反応しているとしたらどんなテンポなのかなど、詳しい分析は十分に行われていませんでした。
そこで今回、東京大学の研究者たちは人間の作った音楽にラットがどのように反応するかを調べることにしました。
実験にあたっては人間の被験者とラットの頭部に加速を検知する装置が設置され、体の動き(主に頭部の動き)が記録しました。
使用された音楽は軽快なピアノの音色が心地いい、モーツァルト作「2台のピアノ・ソナタ ニ長調 K488」。
研究者たちは、このモーツァルトの音楽を人間とラットの両方に対して、元の速さの75%、100%、200%、400%の4種類の速さで聴いてもらいました(元の速度は毎分132ビートです)。
(※人間の被験者には音楽にあわせて頭部を動かすようにあらかじめお願いされていました。一方ラットにはそのような要請ができないため、音楽が流されている間の様子が記録されました)
結果、人間もラットも1分間あたり120~140回の拍数のときに、最も明確なビート同期が行われている(上手くリズムにのれている)ことが判明しました。
また驚くべきことに、同じ音楽が流れているときには、人間が頭を振るパターンとラットが頭を振るパターンが一致していることが示されました。
そうなると気になるのが、理由です。
人間とラットは体の大きさや呼吸速度が大きく違うだけでなく、手足を動かす速度も全く異なります(※手足の速度はラットのほうがずっと速い)。
そのため人間とラットでは、ラットのほうがより速いペースでビートを刻むと予測されていました。
ビートの刻みやすさが身体的要素に依存しないならば、いったいどんな要素が人間とラットのリズム感を支配しているのでしょうか?