人間とラットのヘドバンが同じペースである理由
種ごとのビートの刻みやすさは何が決めているのか?
研究者たちが着目したのは、脳でした。
ビートを刻む能力が身体的要素に影響を受けないのならば、残る要素は脳の情報処理パターンしかありません。
そこで研究者たちはラットの聴覚野の活動を調べることにしました。
するとラットの脳活動は毎分120ビートあたりの刺激に最も同期しやすいことが判明。
そこで研究者たちは「同じ刺激に対する脳の反応の鈍り」を考慮に入れた数理モデルを作り、実験結果の説明を試みました。
脳は同じタイプの刺激が素早く連続した場合、同じものとして処理する傾向があります。
たとえば特定の電子音が非常に狭い間隔で鳴り続けた場合、人間はその電子音をひと繋がりの音として認識してしまいます。
人間とラットに刻みやすいビート速度がある場合、この反応の鈍りが関係している可能性がありました。
結果、ラットの脳にはリズミカルな音刺激後の250ミリ秒について、同じ音刺激への反応が鈍くなっている期間があり、このため毎分120ビートが最もノリ易いことが示されました。
一方、ランダムな音刺激に対しては、鈍さが続く期間が200ミリ秒と若干短くなっていることが判明。
興味深いことにクラシック音楽の音間隔を調べたところ平均は200ミリ秒となっていました。
そのため研究者たちは、人間の脳にもラット脳と同様に、同じ音刺激に対する反応を一定期間鈍くする仕組みが存在しており、その鈍感期間がマウスと同程度なために、ノリ易いビート速度が一致していると結論しました。
つまり人間とラットが同じ速度でのビート刻みを得意とするのは、脳の反応パターンが同じだったからなのです。
研究者たちはビートの刻みやすい速度が種を超えて一致しているという結果は、音楽やダンスの起源が非常に古い仕組みである証拠だと述べています。