舌を出して走る柴犬 No.0006

ナゾロジー図鑑 ・ 生き物

イヌ

Canis familiaris

オオカミから生まれた、
人類さいしょの相棒。

ナゾロジーの記事
123本
人とのつきあい
1万4000年以上
寿命(中央値)
約12.7年

イヌは、絶滅したオオカミの集団から生まれ、1万4000年以上前から人と暮らしてきた最も古い家畜です。においを感じる細胞は人のおよそ40倍。チワワからグレート・デーンまで、大きさや姿がとても多様です。

図鑑データ

分類
哺乳類 › 食肉目 › イヌ科 › イヌ属
学名
Canis familiaris(Canis lupus familiaris とも)
英名
dog(ドッグ)
祖先
すでに絶滅したオオカミの集団
大きさ
チワワ 0.5〜3kg から グレート・デーン 50〜79kg まで
歯
42本(おとな)
すみか
世界中(人とともに)
日本では
縄文時代から人と暮らす。天然記念物の日本犬が6種
食べもの
雑食(肉・野菜・穀物など)
寿命
中央値 約12.7年
増え方
妊娠期間 平均63日、1回に平均6匹ほど
人とのくらし
1万4000年以上前から(農業より前)

イヌとは(何類?)

イヌは、哺乳類の食肉目イヌ科イヌ属に分類される動物で、オオカミから生まれた家畜です。学名は Canis familiaris。オオカミ(Canis lupus)の亜種として Canis lupus familiaris と書くこともあります。人が最初に家畜にした動物と考えられていて、ネコとならぶ代表的なペットです。

1758年、スウェーデンの学者リンネは、しっぽが上向きに巻くことを理由に、イヌをオオカミとは別の種としました。いまも、イヌを独立した種とするか、オオカミの亜種とするかは意見が分かれています。

大きさと体のつくり

イヌは犬種によって大きさがまったくちがいます。大きなグレート・デーンは体重50〜79kg、高さ71〜81cmにもなりますが、小さなチワワは0.5〜3kg、13〜20cmほどです。それでも骨の数は、しっぽをのぞけばどの犬種も同じです。

  • 歯:おとなの歯は42本。山のようにとがった大きな奥歯(裂肉歯)で、肉をはさみのように切ります。
  • 足:指先で体を支えて歩き、ネコとちがって爪を引っこめることはできません。とがった爪は、走るときにスパイクの役目をします。
  • 体温の調節:汗腺は足の裏の肉球くらいにしかありません。そのため、舌を出してハアハアと速い呼吸(パンティング)をし、口の中の水分を蒸発させて体を冷やします。
  • しっぽ:気持ちを伝えるほか、体がかたむいたときにバランスをとるのにも役立ちます。

歩道で並ぶ大きなグレート・デーンと小さなチワワ
グレート・デーンとチワワ写真: David Shankbone(CC BY 2.5) / Wikimedia Commons

大きなイヌと小さなイヌの骨格標本
骨の数は同じ写真: Sklmsta(CC0) / Wikimedia Commons

舌を出して寝そべるビーグル
舌を出して体を冷やす写真: Trougnouf (Benoit Brummer)(CC BY 4.0) / Wikimedia Commons

鼻・耳・目(すぐれた感覚)

鼻:イヌでいちばん発達している感覚は嗅覚です。においを感じる受容細胞は人のおよそ40倍あり、脳でも、人は視覚をあつかう部分が大きいのに対し、イヌはにおいをあつかう部分が大きくなっています。においを感じる鼻の粘膜(嗅上皮)の広さも、人の3〜4cm²に対して、イヌは犬種によって15〜150cm²あります。

ただし、人の「何倍」鋭いかは、においの種類によって大きくちがいます。犬種による差もあり、2025年に527匹を調べた研究では、隠したエサを鼻で探すテストで、牧羊犬のボーダー・コリーが、においを使う狩りのために改良されたバセット・ハウンドやブラッドハウンドより高い成功率を示しました。

鼻先は熱にも敏感です。2020年の研究で、イヌは毛皮の動物と同じくらいの温度の物から出る弱い熱(熱放射)を、離れたところから感じ分けられることが分かりました。

黒いイヌの鼻先のアップ
しっとりした鼻先写真: Tony Webster(CC BY-SA 2.0) / Wikimedia Commons

耳:聞こえる音の高さは40〜4万7000Hzで、人(20〜2万Hz)より高い音まで聞こえます。人には聞こえない犬笛は、この性質を利用したものです。

目:色を感じる細胞は2種類で、黄色・青・灰色の世界を見ていて、赤と緑の見分けは苦手です。視力は人より劣りますが、動くものを見るのは得意です。目の奥にはタペタム(輝板)があり、暗いところでは人より見やすくなっています。

地球の磁気を感じている可能性もあり、磁場が落ち着いているときには、背骨を南北の向きにそろえてフンをする傾向があると報告されています。

車のまわりのにおいをかぐ警察犬
においで探す探知犬写真: Amber Carter(アメリカ空軍)(Public domain) / Wikimedia Commons

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オオカミからイヌへ(祖先と歴史)

DNAの研究から、いまのイヌはすべて共通の祖先をもち、現在生きているどのオオカミとも別の、すでに絶滅したオオカミの集団から生まれたと考えられています。2020年に古代のイヌ27匹のゲノムを調べた研究でも、イヌは一度だけ生まれたらしいことが示されました。

家畜になったのは農業が始まるより前です。確実にイヌと分かる最古の例は、ドイツのボン・オーバーカッセルで男女とともに埋葬されていた約1万4200年前のイヌです。このイヌは子犬のときにジステンパーという重い感染症にかかりながら生きのびていて、人に世話をされていたと考えられています。2026年には、トルコの約1万5800年前、イギリスの約1万4300年前の遺骸のDNAから、少なくとも1万4300年前には、遺伝的にまとまったイヌの集団がヨーロッパとアナトリアに広がっていたと報告されました。家畜になる過程そのものは、2万5000年以上前に始まった可能性もあります。

木立の中に立つオオカミ
イヌの親戚、オオカミ写真: Musicaline(CC BY-SA 4.0) / Wikimedia Commons

展示されたイヌの下あごの骨と歯
最古のイヌの骨写真: Thilo Parg(CC BY-SA 4.0) / Wikimedia Commons

どこで家畜になったかはまだはっきりしません。2024年には、江戸〜明治時代のニホンオオカミ9頭のゲノムを調べた研究で、ハイイロオオカミのなかでニホンオオカミがイヌに最も近いことが分かり、イヌの系統は東アジアで生まれた可能性が高いと報告されました。また、2025年に2,693匹分のイヌとオオカミのゲノムを調べた研究では、いまの犬種の64.1%に、オオカミとの交雑に由来するDNAが見つかっています。

人と暮らすうちに、イヌはデンプンを消化する力も高めました。デンプンを分解するアミラーゼの遺伝子のコピーが多く、その働きはオオカミの28倍あると報告されています。

日本では、縄文時代早期(約1万年前)の遺跡からイヌ(縄文犬)の骨が見つかっていて、埋葬された例もあります。

展示ケースの中の縄文犬の頭骨
縄文犬の頭骨写真: Fred Cherrygarden(CC BY-SA 4.0) / Wikimedia Commons

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何を食べる?(食べてはいけないものは?)

イヌはもともと肉食のなかまですが、肉だけでなく野菜や穀物なども食べる雑食性です。栄養の面では、肉食動物と雑食動物の中間にいるともいわれます。体内でつくれない10種類のアミノ酸(必須アミノ酸)は、食べものからとる必要があります。

ネコとちがって甘みを感じることができ、サツマイモなど甘いものを好みます。ただし、味を感じる味蕾は1700〜2000個ほどで、人の約1万個より少なく、味には鈍感だとされています。

人の食べもののなかには、イヌに有害なものがあります。中毒の原因として多いのは、チョコレート(成分のテオブロミン)、キシリトール、ブドウやレーズン、タマネギやニンニクなどのネギのなかまです。

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しっぽ・目・涙(人とのきずな)

しっぽ:しっぽの大事な役目は、気持ちを伝えることです。2007年の研究では、飼い主など近づきたい相手を見たときには、しっぽを右側に大きく振る傾向があると報告されました。イヌがほかのイヌ科の動物よりよくしっぽを振るのは、おとなしさを選んで改良するうちについてきた性質か、リズムを好む人間が選んだ結果ではないか、という仮説も出されています(2024年)。

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見つめ合う:2015年の研究で、イヌと飼い主が見つめ合うと、きずなに関わるホルモン「オキシトシン」が増えることが示されました。人とほとんど目を合わせないオオカミでは、この効果は見られませんでした。

眉:イヌには、眉の内側を大きく持ち上げる筋肉がありますが、オオカミにはありません。この表情は悲しいときの人の顔に似ていて、人の「世話をしたい」気持ちを引き出すのかもしれません。人がこうした表情のイヌを好んできた結果だと考えられています(2019年の研究)。

こちらを見つめる長い毛のイヌの顔
豊かな表情写真: Jakub Hałun(CC BY-SA 4.0) / Wikimedia Commons

うれし涙:2022年の研究では、イヌは飼い主と再会すると涙の量が増えることが分かりました。オキシトシンを目にたらしても涙が増えたことから、このホルモンが関わっていると考えられています。

ことば:ボーダー・コリーの「チェイサー」は、1,000語以上の物の名前を覚えていたことが記録されています。

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寿命と増え方

イヌの寿命は犬種によって大きくちがい、寿命の中央値(半分が亡くなる年齢)は約12.7年です。ふつう大型犬のほうが小型犬より短命です。太りすぎのイヌは、適正体重のイヌより寿命が1年半ほど短いという研究もあります。

記録に残る最高齢は、1939年に29歳5か月で亡くなったオーストラリアの牧畜犬「ブルーイ」です。31歳とされた「ボビ」の記録は、2024年に疑いが出て認定が止められています。

イヌの年齢を人に置きかえる方法はいくつも提案されていますが、科学的な根拠がはっきりしたものではありません。2020年には、104匹のラブラドール・レトリバーのDNAの変化(メチル化)を人と比べた研究で、イヌと人の年齢は単純な比例ではない関係で対応することが示されました。

イヌは生後半年から1年ほどで性成熟し、メスはふつう年に2回発情します。妊娠期間は58〜68日で、平均63日。1回に生まれる子犬は平均6匹ほどです。

芝生の上で子犬にお乳をあげる黒い母犬
子犬にお乳をあげる母犬写真: Sharon Byrne Photography(CC BY-SA 4.0) / Wikimedia Commons

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人とのかかわり(働くイヌ・日本のイヌ)

イヌは、狩りの手伝いや番犬、家畜の群れを誘導する牧羊犬、においで人や物を探す警察犬・災害救助犬・探知犬、目の不自由な人を助ける盲導犬など、さまざまな仕事で人を支えてきました。

日本には、国の天然記念物に指定された6つの日本犬(秋田犬・甲斐犬・紀州犬・柴犬・四国犬・北海道犬)がいます。1934年には、亡くなった主人の帰りを渋谷駅で待ち続けた秋田犬「ハチ公」の銅像が、駅前に建てられました。

ハチ公像のまわりに集まる人たち
渋谷駅前のハチ公像写真: Dick Thomas Johnson(CC BY 2.0) / Wikimedia Commons

一方で、世界の狂犬病の99%はイヌが原因です。日本では狂犬病予防法により、飼い犬の登録と年1回の予防注射が飼い主に義務づけられています。

よくある疑問

イヌは何類?
哺乳類です。食肉目イヌ科イヌ属に分類され、オオカミやキツネ、タヌキなどと同じイヌ科のなかまです。オオカミの亜種とする考え方もあります。
イヌの寿命はどれくらい?
犬種によって大きくちがいますが、寿命の中央値は約12.7年です。大型犬は小型犬より短命な傾向があります。記録に残る最高齢は、29歳5か月まで生きたオーストラリアの「ブルーイ」です。
イヌの嗅覚は人間の何倍?
においを感じる受容細胞の数は、人のおよそ40倍です。ただ、においの種類によって感じ方の差は大きく、「何倍」とひとことで言うのはむずかしいとされています。
イヌにブドウやチョコレートをあげてもいい?
いけません。チョコレート(テオブロミン)、キシリトール、ブドウやレーズン、タマネギやニンニクは、イヌの中毒の原因として多く報告されています。
イヌはなぜしっぽを振るの?
しっぽは気持ちを伝える大切な道具です。近づきたい相手には右寄りに大きく振るという研究もあります。ほかのイヌ科よりよく振る理由は、人に飼われるあいだに身についた性質ではないかと考えられていますが、まだ研究の途中です。
イヌとオオカミはどこがちがう?
イヌは、人と見つめ合うことできずなを深めたり、眉を持ち上げる筋肉で豊かな表情をつくったりと、人とのやりとりにすぐれた特徴をもっています。デンプンを消化する力もオオカミより強くなっています。

ナゾロジーで読む123本

  1. 01 犬は人間が話すとき母音よりも子音に注意を向けていた――言葉を区切る仕組み
  2. 02 チワワは実はコヨーテの血を引いていることが判明
  3. 03 「犬アレルギーの主要原因」を持たないビーグル犬が誕生
  4. 04 犬の脳は人間の「恐怖」と「悲しみ」を区別していた
  5. 05 犬の認知症のサインとなる「歩き方の変化」が明らかに

参考文献

  1. Bergström A ほか (2020) Origins and genetic legacy of prehistoric dogs. Science
  2. Marsh WA ほか (2026) Dogs were widely distributed across western Eurasia during the Palaeolithic. Nature
  3. Gojobori J ほか (2024) Japanese wolves are most closely related to dogs and share DNA with East Eurasian dogs. Nature Communications
  4. Lin AT ほか (2025) A legacy of genetic entanglement with wolves shapes modern dogs. PNAS
  5. Axelsson E ほか (2013) The genomic signature of dog domestication reveals adaptation to a starch-rich diet. Nature
  6. Salamon A ほか (2025) Breed differences in olfactory performance of dogs. Scientific Reports
  7. Bálint A ほか (2020) Dogs can sense weak thermal radiation. Scientific Reports
  8. Hart V ほか (2013) Dogs are sensitive to small variations of the Earth's magnetic field. Frontiers in Zoology
  9. Quaranta A ほか (2007) Asymmetric tail-wagging responses by dogs to different emotive stimuli. Current Biology
  10. Leonetti S ほか (2024) Why do dogs wag their tails? Biology Letters
  11. Nagasawa M ほか (2015) Oxytocin-gaze positive loop and the coevolution of human-dog bonds. Science
  12. Kaminski J ほか (2019) Evolution of facial muscle anatomy in dogs. PNAS
  13. Murata K ほか (2022) Increase of tear volume in dogs after reunion with owners is mediated by oxytocin. Current Biology
  14. Wang T ほか (2020) Quantitative Translation of Dog-to-Human Aging by Conserved Remodeling of the DNA Methylome. Cell Systems
  15. Wikipedia「イヌ」(日本語版)
  16. Wikipedia「Dog」(英語版)
  17. Wikidata「dog」(Q144)

表紙の写真: whity(CC BY 2.0) / Wikimedia Commons
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この図鑑は、参考文献の資料をもとに、ナゾロジー編集部がまとめています。