イヌは人間の「いじわる」と「うっかり」を判定できる
フォルター氏らが行った実験は「人間がイヌにエサを与えようとして失敗する」というシナリオで行われました。
イヌと人間の間は穴の空いた透明なアクリル板で仕切られていて、人間はアクリル板に空いた穴からイヌにエサを与えようとします。
結果として両者ともイヌにエサは届かないのですが、エサの受け渡しは下記の1、2のような異なる態度で行います。
- 穴にエサを近づけ見せびらかすようにしたあと、イヌが届かない位置までひっこめる
- 穴にエサを近づけ、ぎりぎりの位置で落としてしまい、慌てて拾う
つまり、1は「故意にいじわるをしている」シチュエーションであり、2は「うっかり失敗してしまった」シチュエーションです。
これをそれぞれ何度も繰り返し、イヌの動きを観察したところ、1と2では全く違った態度をとりました。
イヌは人間が「いじわる」でエサを与えないのか、「うっかり」エサを与えられなかったのか判断することができたのです。
イヌは「うっかり」の人間のみ待ってくれる
前述の通り、1と2は何度も繰り返し行われましたが、イヌは1の「いじわる」でエサを与えない人間からはすぐに立ち去ってしまいました。
一方、2の「うっかり」エサを与えられない人間に対しては、1よりもずっと長い間座ってエサを待った他、立ち上がったあとも人間を心配するようにアクリル板に顔を寄せて歩き回っていました。
この実験は48匹のイヌに対して行われましたが、イヌの待ち時間の平均は1よりも2の方が有意に長いという結果になっています。
イヌが「いじわる」な人間に対しエサを待つことを早々に諦めたのは、その人間の内面に「最初からエサを与える気がない」ことを見たからに他ならないでしょう。
対して、2の人間に対しては「エサを与えようとがんばっている」ように思えたのかもしれません。
イヌは人間の内面を推測し、その結果を行動として反映させたのです。
こういった「他人の気持ちを想像する」行為は人間ではよく見られますが、動物では珍しいことです。
イヌの他にも動物がこのような行為を行うことはあるのでしょうか?