犬の社会的スキルの40%は遺伝的なものだった
今回の研究では、アメリカの介助犬団体「Canine Companions」の協力のもと、平均生後8.5週の子犬375匹を対象に(犬種はラブラドールとゴールデンレトリーバー)、人との協調性や合図(指差し)に対する反応を調べました。
8.5週という年齢は、母犬から離すには十分ですが、人とのコミュニケーション学習や訓練にはまだ未熟な時期です。
実験では、子犬に4つのタスクを課しました。
1つ目は、ひっくり返した2つのカップの片方におやつを隠し、実験者がそのカップを指差して、子犬がそのサインを追えるかを調べます。
2つ目も同様の実験で、指差しの代わりに、おやつを隠したカップの横に黄色のブロックをおきました。
この時、子犬が嗅覚を頼りにしていないことを確認するため、両カップの内側にあらかじめ別のおやつを貼り付けてあります。
結果、子犬たちは3分の2の確率で合図を理解し、正しいカップを選ぶことに成功しました。
研究主任のエミリー・ブレイ氏は「驚くことに、これは成犬とほぼ同じ数字でした。しかし、成犬は回を重ねるごとに学習し正解率が上がるのに対し、子犬には正解率の変動がありませんでした」と説明します。
3つ目は、実験者が子犬に呼びかけをし、それに反応するかを見ました。
その結果、子犬たちの多くが平均6秒間のアイコンタクトに成功しており、人との社会的スキルをすでに有していることを示唆します。
4つ目は、容器におやつを入れる様子を子犬に見せた後でフタをし、子犬の反応を観察しました。
成犬では自分で開けられないので人に助けを求めますが、子犬たちは助けを求めるように実験者を見ることはありませんでした。
これは子犬たちが「助けを求めたら応じてくれる」ことをまだ理解していないということです。
以上の結果から、子犬たちの社会的スキルの一部は、訓練による習得ではなく、生得的なものであることを示します。
これと別に研究チームは、子犬たちの飼育履歴や血統データを分析し、今回のタスクパフォーマンスと遺伝的要因との関連性を調べました。
その結果、合図を追う能力やアイコンタクト行動の40%以上が遺伝的要因で説明できたとのことです。
これを受けて、ブレイ氏は「子犬の生得的な社交性に関与する遺伝子を特定したい」と今後の展望を述べています。