「小型化」の対立遺伝子を特定
遺伝子はDNAの一部であり、タンパク質をコード(合成)するための設計図として機能します。
それぞれの遺伝子は、アデニン(A)・グアニン(G)・シトシン(C)・チミン(T)という4つの塩基の組み合わせからなり、特定のタンパク質をコードします。
小型化に関連する遺伝子変異は、2007年に、インスリン様成長因子1(IGF-1)という遺伝子に見つかりました。
IGF-1は、ヒトを含む哺乳類に存在し、生まれてから大人になるまでの体格の形成に関係します。
また、イヌにおいてIGF-1は、品種間の体格差の約15%を決定づけています。
一方で、IGF-1と関連する機能的な突然変異は、これまでほとんど特定できていませんでした。
そこで研究チームは、祖先から受け継いだIGF-1の対立遺伝子が、イヌ科動物の体格に与える役割を理解するため調査を開始。
高等生物は遺伝子を必ずペアで持っており、親から子に遺伝子が伝えられる際に、どちらか一方が選ばれます。
これが対立遺伝子です。
たとえば、ヒトのABO式血液型では、A遺伝子・B遺伝子・O遺伝子の3つの対立遺伝子があります。
調査では、古代および現代のイヌ科動物13種、計1431個体のゲノム配列を解析し、対立遺伝子の役割を調べました。
すると、イヌのIGF-1遺伝子には、体格の小型化に寄与する対立遺伝子ではシトシン(C)が余分にあり、体格の大型化に寄与する対立遺伝子ではチミン(T)が余分にあることがわかりました。
子孫のイヌは、2つの対立遺伝子をそれぞれの親から1つずつ受け継ぎます。
小型化の対立遺伝子を2つ持つ個体(CC)、双方を1つずつ持つ個体(CT)、大型化の対立遺伝子を2つ持つ個体(TT)の3通りです。
そして、すべての犬種のDNAを分析した結果、体格と対立遺伝子の間に明確な相関関係があることが分かりました。
つまり、小型犬はCC、中型犬はCT、大型犬はTTとなっていたのです。
IGF-1遺伝子の体格への影響は分かりましたが、では、その突然変異はいつごろ起こったのでしょうか。