遺伝子変異は5万4000年以上前に起きていた
2007年時点では、イヌの小型化に関わる遺伝子の出現は、ヒトとイヌが密接に関わり始めた約1万2000年前と予想されていました。
しかし調査の結果、小型化遺伝子の出現は少なくとも5万4000年以上にまで遡ることが判明しました。
というのも、先に示した対立遺伝子の変異体(CとT)が、シベリアオオカミの化石から採取した約5万4000年前のDNAにすでに存在していたからです。
それだけでなく、ジャッカルやコヨーテ、アフリカの狩猟犬など、現在も生きている小さな犬種からは、小型対立遺伝子(CC)が検出されました。
これらの対立遺伝子は、小型種の中で脈々と受け継がれていたのです。
研究主任のエレイン・オストランダー(Elaine Ostrander)氏は、こう述べています。
「小型化の対立遺伝子は、大型化のそれに比べて、ずっと最近に生まれたと予測されていましたが、そうではありませんでした。
まるで自然が何万年もの間、必要になるまでポケットにしまっておいたかのようです」

その一方で、「人間の家畜化と繁殖の介入なしに、小型犬が自然に進化して、現在見られるほど小柄になった可能性は極めて低い」と付け加えています。
「この対立遺伝子は、ヒトに家畜化された時期に選択されるまでの長い間、低いレベルで維持されてきたのです」
つまり、小型化の対立遺伝子は、大昔から潜在的に存在していたものの、明確に形となって現れたのは人の手による、ということです。
具体的に、小型犬の品種改良は、ウサギのような小さな獲物を狩るのに適したイヌを作るために行われました。
先行研究によれば、最初期の小型犬は7000〜9500年前に誕生したと言われています。
ただ、イヌの体格に影響する遺伝子は、IGF-1だけではありません。
チームは今後、チワワからグレートデーンに至るまで、あらゆる犬種のサイズを決める遺伝子を理解するべく、研究を続ける予定です。
「次なるステップは、これらの遺伝子によって作られるすべてのタンパク質がどのように連携して、大型犬や小型犬、その中間の犬種を作るのかを解明することです」とオストランダー氏は述べています。