- ホライモリは洞窟の中で10年近く移動していないことがわかった
- 動かないライフスタイルはホライモリの寿命を伸ばしていた
ホライモリはウーパールーパーの仲間であり、これまで知られている最大級の洞穴性の脊椎動物です。
一生を洞窟の中で過ごすホライモリは独自の進化を遂げており、他の両生類ではありえない特徴がいくつもあります。
100年もの寿命を持ち、生殖周期は12.5年に1度きり。さらに低酸素にも耐性があり、代謝効率もよく数年間食べずに生きてゆけるなど、極端な能力が知られています。
加えて今回、ホライモリの生活空間を調べる長期的な研究が行われたところ、ほとんどのホライモリは数年間、同じ場所から数メートルも動いていないとのこと。中には7年間もの間、移動が確認されない個体もいたようです。
研究内容はハンガリーの研究者G. Balazsらによって、1月28日に学術雑誌「Journal of Zoology」に掲載されました。
https://zslpublications.onlinelibrary.wiley.com/doi/epdf/10.1111/jzo.12760
暗く栄養に乏しい洞窟環境に適応
A lazy cave salamander didn't move from the same spot for 7 years https://t.co/c6HBc0Hkzn pic.twitter.com/n7v2o7GAkT
— New Scientist (@newscientist) February 2, 2020
洞穴の環境は、光がなく、温度が一定で、栄養に乏しいという特徴があります。
ホライモリはこの環境で進化したために、目が皮膚の中に埋もれてしまい、外観上、目が退化してなくなったように見えるのです。
一方で、暗闇に適応するために、水中聴覚や嗅覚、磁気感覚といった非視覚感覚を発達させています。
また乏しい栄養環境の中でエネルギーを節約するために、ホライモリはギリギリまで代謝を遅くしました。
そのため、多くのエネルギー消費が必要な成長や生殖周期に時間がかかるようになってしまいましたが、代謝が遅いことでDNAにかかる負担が少なくなり、結果的に100歳を超える長寿も可能となりました。
100歳を超える寿命の長さは、両生類の中では群を抜いています。
そんなホライモリに対して、生物学者は古くから関心をもっており、1807年には既に寿命の長さに関する報告があがっています。
しかし、ホライモリの変わった特徴に目がいく一方で、これまで、基本となる生態学的なデータ(空間戦略、運動パターン、集団の分散範囲など)は知られていませんでした。
これまで得られたホライモリにかかわるデータは、全て人間の飼育下におけるものだったからです。
そこで今回、研究者は野生のホライモリに個体識別可能なタグをホライモリにつけて、野生環境における各個体の長期的な移動範囲を調べました。