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1種類だと思われていた電気クラゲ、実は4種類いた / Credit:Canva
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1種類だと思われていた「電気クラゲ」は”まさかの4種”存在していた

2025.07.17 22:00:11 Thursday

「電気クラゲ」という名前を聞いたことがあるでしょう。

これは正式には「カツオノエボシ」と呼ばれる生物で、毒性の強さからそのような通称がつけられています。

見た目は美しく、水族館でその青く透き通った姿を見たことがある人も多いかもしれません。

しかしこのカツオノエボシ、実は私たちが思っていたよりもはるかに多様な存在だったようです。

アメリカのイェール大学(Yale University)などによる国際研究チームが、世界中のカツオノエボシのゲノム解析を行った結果、これまで1種と考えられてきたカツオノエボシが、少なくとも4種類の異なる種に分類されることがわかったのです。

この研究成果は、2025年6月19日付で科学誌『Current Biology』に掲載されました。

The Portuguese man o’ war includes four distinct species, new research reveals https://phys.org/news/2025-06-portuguese-war-distinct-species-reveals.html
Population genomics of a sailing siphonophore reveals genetic structure in the open ocean https://doi.org/10.1016/j.cub.2025.05.066

電気クラゲ「カツオノエボシ」とは何か?

まず、カツオノエボシの基本的な特徴についておさらいしておきましょう。

カツオノエボシは刺胞動物門ヒドロ虫綱に属する「群体生物」です。

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カツオノエボシ / Credit:Wikipedia Commons

見た目はジェリーフィッシュとして知られているクラゲのようですが、実はそれらとは異なります。

カツオノエボシは、複数のポリプ(個体)が役割分担しながら一つの生き物のように機能する集合体なのです。

例えば、浮袋を担う部分、捕食や防御を行う触手、消化を行う部位、繁殖を担う部分などが、それぞれ別のポリプに分かれています。

そして「電気クラゲ」という通称は、彼らが持つ強力な性に由来します。

カツオノエボシは触手に毒針を持ち、人間が刺されると激痛や麻痺、場合によっては命に関わることもあるほどの毒を放ちます。

この毒の性質が「電撃のような痛み」と形容されたことから、「電気クラゲ」という名で呼ばれるようになったと考えられています。

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「電気クラゲ」として知られるカツオノエボシ / Credit:Canva

この生物は、太平洋、大西洋、インド洋に広く分布しており、海流や風を利用して浮袋を帆のように膨らませ、海面を漂うというユニークな移動方法をとります。

日本近海でも夏場になると打ち上げられることがあり、注意喚起が行われることもあります。

さて、そんなカツオノエボシが「1種類ではないかもしれない」という仮説が持ち上がったのは、長年の観察から「地域によって微妙に形が異なる」「同じ海にいても交雑していない」といった現象があったためです。

とはいえ、これまではその違いが単なる変異の範囲内と考えられてきました。

ところが今回、国際研究チームはこの疑問を科学的に明らかにすべく、世界中から集めた151体のカツオノエボシのゲノム解析を行いました。

同時に、市民科学プロジェクト「iNaturalist」に世界中のユーザーから投稿された4,000枚以上の写真を用いて形態の分類を行い、遺伝的な違いと形態の違いを照らし合わせました。

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