Point
■犬の嗅細胞は2億〜3億個あり、人間の50倍以上に上る
■犬は室内の微妙な空気変動を嗅ぎ分けて、時間帯を認識している
■残り香だけで、そこに誰が何時間前からいたかが嗅ぎ分けられるという
犬が持つ嗅細胞の数は2億〜3億個(犬種による)に達する。人間が500万個であることを考えると、途方も無い数である。
さらに訓練を積んだ犬となると、人のガン遺伝子によって形成されるタンパク質を嗅ぎ分けることができ、呼気や尿の匂いを嗅ぐだけでガンを見分けるのだという。
これだけでも十分驚きなのだが、さらに匂いだけで時間まで認識するらしいのだ。
米バーナード・カレッジのDog Cognition Lab設立者アレクサンドラ・ホロウィッツ氏によると、犬は嗅覚を用いることで1日の時間帯や目先の予測をしているという。
空気の変動で時間を予測する
では、犬はどうやって時間帯を把握しているのだろうか。フォロウィッツ氏によれば、その指標は空気変動だ。
例えば朝から昼にかけて時間が経つにつれ室内の空気が流動していく。暖かくなった空気が壁に沿って天井まで上昇すると、今度は部屋の中心に向かって降下する。こうした空気の変化を、犬は嗅覚情報として知覚しているのだ。
それに合わせて主人が帰宅する頃合いや食事・就寝などの時間帯を嗅ぎ分けているのである。犬にとっては空気の変化が時計代わりとなっているというわけだ。
他にも犬は特定の場所に残る匂いだけで、そこに誰がいたのかも分かる。もっと言えば、残り香の濃度で誰が何時間前までいたかどうかも識別できるらしい。
また驚くべきことに、犬は嗅覚の鋭さで次に何が起こるかを予測できるという。例えば散歩中、曲がり角の向こうから漂う匂いで何が来るのかを知ることができるのだ。
ホロウィッツ氏は飼い主に対して「何でも見境なく匂いを嗅ぐ犬を止めるのではなく、積極的に匂いを嗅がせて生まれつきの才能を伸ばした方が懸命だ」と話す。
私たち人間の知覚は多くを視覚情報に頼っているが、犬は嗅覚がメインとなっている。犬にとっては匂いを嗅ぐことが、人に対しても物に対しても大きなコミュニケーションとなっているのだ。
嗅覚を生かした犬の職業も多岐にわたっている。海賊版DVDに含まれる樹脂を嗅ぎ分ける「DVD探知犬」やトリュフを探す「トリュフ探知犬」、さらには地中から人骨を探す「考古学犬」もいるそうだ。もはや人間にとっては第六感である。