- ディンゴはイエイヌとは真逆の、犬の野生化によって誕生した
- 野生化によってディンゴの遺伝子はオオカミに近くなった
ディンゴはオーストラリアに住むイヌやオオカミの仲間であり、そのシルエットには柴犬に似たなじみ深さを感じさせます。
しかし有袋類の大陸として知られるオーストラリアでは「袋ナシ」の哺乳類であるディンゴは、長く異質の存在でした。
これまでの研究で、ディンゴが「いつ」「どうやって」オーストラリアにやってきたかが調べられてきましたが、明確な答えは得られませんでした。
しかし今回の遺伝学的な研究によって、ディンゴのルーツが明らかになりました。
ディンゴはおよそ8300年前に、イエイヌとは真逆の「犬の野生化」によって、新たに誕生した種だったのです。
数万年前、一度はオオカミからイエイヌとして飼いならされた種が、野生化によって再び別の種になるという、複雑な過程が解明されたことで、生命の進化に対する理解が深まると期待されています。
研究結果は少杰張氏らによってまとめられ、2月3日に学術雑誌「nature」に掲載されました。
https://www.nature.com/articles/s41467-020-14515-6#Sec22
ディンゴの祖先は8300年前にインドネシアの村で飼われていた犬
ディンゴの起源を探るために、研究者たちはまずディンゴの遺伝子をイエイヌと比較しました。
比較することで、数あるイエイヌのなかで、どの犬種がディンゴに近いかを調べようとしたのです。
その結果、ディンゴの直近の祖先は、インドネシアの村で昔から飼われている地元原産のイエイヌであることがわかりました。
おそらく8300年前に人間との関係を断ち切られたことで、ディンゴの食べ物は狩りによって獲得するものとなり、野生化が始まったと考えられます。
またディンゴとイエイヌの「遺伝子の総変化量」を「一世代ごとの平均的な変化量」で割ることにより、ディンゴが野生化した時期を8300年前と推定できました。
このことからディンゴの先祖は、最終氷河期(1万年前に終了)の後にインドネシアからオーストラリア大陸に渡ったと考えられるのです。